Evident LogoOlympus Logo
事例・お役立ち資料
アプリケーションノート
リソースに戻る

リチウムイオンバッテリーのリサイクルでポータブル蛍光X線分析計を使い金属を識別


電気自動車の需要が世界中で高まり、高性能のリチウムイオン(Li-ion)バッテリーのニーズも増えています。リチウムイオンバッテリーは、より持続可能なエネルギー源への移行において重要な役割を果たす一方で、寿命の終わりには適切な管理が必要です。

放電した車のリチウムイオンバッテリー

図1:放電した車のリチウムイオンバッテリー

バッテリーを適切にリサイクルすると、バッテリー材料を使い続けて破棄物と汚染を減らし、循環型経済を推進できます。抽出した材料を新しいバッテリーに再製造したり、他のアプリケーションに使ったりし、新生産における原材料のニーズを減らせます。

本アプリケーションノートでは、リチウムイオンバッテリーをリサイクルする価値を示し、バッテリーのリサイクルプロセスを概説します。次に、XRF技術を使って、バッテリー廃棄物から価値ある金属を有効に回収しやすくする方法を明らかにします。

環境に優しい未来のためリチウムイオンバッテリーをリサイクルする重要性

リチウムイオンバッテリーのリサイクルは、持続可能な未来を実現するための重要なプロセスです。リチウムイオンバッテリーは、電気自動車を駆動したり、再生可能エネルギーを保存したり、現代社会において極めて重要な役割を果たしています。

ただし、バッテリーの不適切な廃棄は、環境と資源に関する問題を引き起こします。リチウムイオンバッテリーのリサイクルは、リチウム(Li)、コバルト*(Co)、ニッケル(Ni)など価値ある金属を回収し、資源抽出のニーズを減らし、循環型経済を促進するために不可欠です。バッテリーのリサイクルは、バッテリーに含まれる有害物質が土壌や水源に溶出するのを防ぎ、新しいバッテリーの製造に伴う温室効果ガスの排出を最小限に抑えることで、環境への影響を軽減することにもつながります。

適切なリサイクルにより、バッテリーのライフサイクルが延長され、経済上および環境上の価値が最大限に引き出されます。バッテリーのリサイクルは、持続可能なエネルギー環境を創り出し、天然資源を保全し、環境に対する悪影響を最小限に抑えるために不可欠です。

リチウムイオンバッテリーのリサイクルプロセス

効果的な資源回収を達成し、環境に対する影響を減らすため、リチウムイオンバッテリーのリサイクルにはいくつかの段階があります。

  1. 最初に、使用済みのバッテリーが、電子廃棄物のリサイクル業者や施設など多様な場所から回収されます。交差汚染を避けるため、バッテリーは化学的性質、サイズ、タイプに基づき分類されます。
  2. 次に、バッテリーの電解質、外装、パッケージを取り除く前処理段階を経ます。リチウムイオンバッテリーは、自然発火のリスクをなくすため、処理前に完全放電されます。バッテリーの処理を進める準備をしてから、バッテリーを機械的に細かく破砕または粉砕します。バッテリー内部を露出させることで、貴重な成分をより効果的に抽出・分離することができます。
  3. リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)など、バッテリーの価値ある金属を抽出するため、複数の特殊なプロセスが使用されます(図1を参照)。金属をリサイクルして新しいバッテリーなどの製品を作るために使えるので、資源を求めて採掘する必要性が低減します。
  4. プラスチックコンポーネントを回収することも、リサイクルの目的です。プラスチック要素は、バッテリーの破片から分離された後、リサイクルされたり、燃料として使用されたりします。
  5. リチウムイオンバッテリーのカソード(ブラックマスやブラックパウダーと称される)など一部のバッテリーから得た電解質は、多くの独自のプロセスを使用して回収し、再利用または適切な廃棄のために処理されます。潜在的に危険な化合物は、このプロセスで適切に管理されます。リチウムイオンバッテリーのカソード(ブラックマス)は、バッテリー製造中に再加工され、回収、検査、再利用できます。
  6. 環境規制は、バッテリーのリサイクルプロセス全体を通して厳格に遵守されています。これには、有害廃棄物の適切な処理、廃水処理、排出管理を通じて、環境や人体への潜在的な危害を最小限に抑えることが含まれます。
  7. 最後のステップは、リサイクルや回収を行えない残留廃棄物を法規制に従い適切に廃棄することです。

使用済みリチウムイオンバッテリーのリサイクルプロセス

図2:使用済みリチウムイオンバッテリーのリサイクルプロセス(Zachary J. Baum, Robert E. Bird, Xiang Yu, and Jia Ma. ACS Energy Letters 2022 7(2)、712–719)

リチウムイオンバッテリーをリサイクルすると、希少な資源が保存され、原材料の需要が減り、環境に優しいバッテリーの製造・廃棄方法が促進されます。このようなリサイクルの努力は、バッテリー材料が可能な限り長く循環し続ける循環経済に貢献しています。

ポータブル蛍光X線分析計をリチウムイオンバッテリーのリサイクルプロセスで分析に使う方法

Vanta™シリーズ(図3)などのポータブル蛍光X線分析計を使うと、オペレーターはバッテリーのリサイクルプロセスの多様な段階でサンプルの元素組成物をテストでき、リチウムイオンバッテリーのリサイクルが容易になります。Vanta分析計は、その場で結果を提供し、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などのリチウムイオン電池の元素含有量と金属を、分解と材料分離プロセス中、および沈殿プロセス中に特定することができます。この分析により、適切なリサイクル処理を行うために、さまざまな種類のバッテリーを迅速に分離および分類できます。

リチウムイオンバッテリーリサイクル用ポータブル蛍光X線分析計

図3:Vantaハンドヘルド蛍光X線分析計

Vantaハンドヘルド蛍光X線分析計を使うと、消費者の健康および環境にとって有害な鉛(Pb)や水銀(Hg)などの不純物も特定できます。Vanta分析計では、規制要素の検出下限と合否結果が提供され、コンプライアンススクリーニングが容易になります。ワイヤレス接続とカメラの光学機能で、データのアーカイブプロセスが合理化されます。結果として、Vanta分析計は、使用済みリチウムイオンバッテリー廃棄物の質と純度を評価し、規制と基準を遵守する役に立つツールになります。バッテリーのリサイクル処理でポータブル蛍光X線分析計を使うと、生産性の向上、持続可能性の促進、廃棄物管理の効率性改善を達成できます。

リチウムイオンバッテリーの廃棄物サンプルに関するポータブル蛍光X線分析計による結果

Vanta分析計を使ったリチウムイオンバッテリー廃棄物サンプル(ブラックマス)の蛍光X線分析結果を、図4に示します。この結果は、Vanta分析計がブラックマスのニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)などの金属を解析できることを示しています。

リチウムイオンバッテリーの廃棄物サンプルに関するポータブル蛍光X線分析計による結果

図4:リチウムイオンバッテリーの廃棄物サンプル(ブラックマス)の化学的な結果とスペクトル

非破壊分析では、サンプルの前処理を最小限に抑え、正確な結果を迅速に取得できます。Vanta分析計は、直観的なユーザーインターフェースとカスタム可能なソフトウェアが装備され、使いやすく、操作を簡単に習得でき、高スループットのテストおよび生産性増強を達成できます。

*エビデント社は、人々の暮らしで健康と安全を向上する取り組みを続けています。当社は、国連が定めたビジネスと人権に関する指導原則に沿って、責任を持って事業を行い、市場に貢献することに取り組んでいます。

Olympus IMS

この用途に使用される製品
リサイクル及びスクラップ選別用Vantaハンドヘルド蛍光X線分析計は、モデルに応じてIP64またはIP65の防水防滴防塵性能を備え、米国の 軍用規格(MIL-STD-810G)に準拠した落下試験に合格しているので、過酷な検査環境における破損を軽減し稼働時間を延ばすことができます。
このページはお住まいの地域ではご覧いただくことはできません。
Let us know what you're looking for by filling out the form below.
このページはお住まいの地域ではご覧いただくことはできません。