Inspection & Measurement Systems

用途/事例

アプリケーションノート

鋳物の製造における超音波検査

アプリケーション: このアプリケーションノートでは、厚さ計測、探傷、黒鉛球状化率試験など、鋳物製品での超音波非破壊試験アプリケーションの概要を示します。

背景: 金属を特定の形状に鋳造する技術は昔からありましたが、現在行われているような超音波NDT機器を使用して製品の品質を保証できるようになったのは、ここ数十年のことです。それ以前では、鋳物師がハンマーで鋳物を軽く叩いて、音の響き方から品質を判断していました。現在では、音波も利用するマイクロプロセッサベースの測定器により、鉄鋳物と非鉄鋳物の両方の隠れた内部構造について多くの情報を得ることができます。超音波厚さ計を使用すると、中空鋳物の壁の寸法を測定できます。また、超音波探傷器を使用すると、隠れたポロシティ、内包物、巣、割れ(クラック)を特定できます。さらに、音速に基づく試験を行うことで、鋳鉄の黒鉛球状化率を判定できます。

(a) 超音波厚さ計測
超音波厚さ計測は自動車のエンジンブロックのように形状の複雑な中空鋳物の場合に非常に役立ちます。このような鋳物の場合、鋳造時のコアのずれにより部品の一方の側が薄くなり、他方が厚くなることがあります。超音波計では、部品を切断することなく、一方の側から壁の厚さを測定できます。

機器: この試験は一般に、精密厚さ計(3535DL38DL PLUS)を使用して行います。金属の厚さが約12.5mm(0.5インチ)を超える場合は、浸透力の高い精密厚さ計(35HP35DLHP、HPオプション付きの38DL PLUS)を使用する必要があります。探触子は、測定する厚さ範囲と特定の金属鋳物の音響特性に応じて選択します。広く使用されている探触子は、M106とM1036(両方とも2.25MHz)、およびM109とM110(両方とも5MHz)です。おおよそ50mm(2インチ)を超える非常に厚い鋳物の場合は、500KHzのM101のような大口径/低周波の探触子が推奨されます。

手順: 機器のセットアップおよび校正の詳細な手順は、各測定器の操作マニュアルに記載されています。ここでは、鋳物の測定に関連するその他の追記事項を示します。

カプラント: 砂型鋳物で一般的な粗い表面は探触子のカップリングに影響するので、ゲル(カプラントD)またはグリセリン(カプラントB)などの高粘着性の接触媒質を常に使用する必要があります。

表面状態: カップリング面が非常に粗い場合、接触媒質層内での音の反響をブランキングする必要があるため、探触子で測定可能な最小厚さが大きくなります。同様に、測定可能な最大厚さは、探触子と鋳物との間の音響カップリングの効率低下のために小さくなります。ほとんどの場合、鋳物表面がそのままの状態で厚さ測定できますが、困難な場合には、表面が滑らかになるように加工することにより性能を向上させます。

形状:超音波計測を行うには、鋳物の内面と外面がおおむね平行または同心円状でなければなりません。そうでない場合、音波が探触子に対してずれて反射し、エコーを捉えられなくなります。

音速の差異:正確な超音波厚さ測定が可能なのは、材料の音速が計器の校正時と一致していることが必要です。鉄鋳物と非鉄鋳物では、硬さと粒状構造の変化により、また鋳鉄の場合は黒鉛球状化率の変化により、音速が変化することがあります。冷える速さが部分ごとに異なる大型の鋳物では、不均一な粒状構造のために、1つの部品内で音速が変化する場合があります。最高の測定精度を得るには、試験する部品と金属的に同様な既知の厚さの基準に基づいて常に機器の速度校正を行う必要があります。

散乱ノイズ: 一部の鋳造金属は粒状構造が粗いために底面エコーの前に内部の散乱ノイズが発生し、誤った読み取りによって厚さを正しく測定できないことがあります。これは、カスタマイズしていないデフォルトのセットアップを使用している場合に顕著です。この状態は、波形を観察することで容易に判別することができます。ノイズを読み取ってしまうことによる測定値の誤りは、機器のゲインやブランキングを調整するだけで、またはより低い周波数の探触子に切り替えることによって通常排除することできます。例として、図1と2の波形を見てください。


図1 - 誤った読み取りを引き起こす散乱ノイズ。画面右側にあるのが底面エコー


図2 - 初期ゲインとTDGスロープを調整した後の正確な厚さの読み取り

(b) 超音波探傷
鋳造工程で金属にさまざまな不連続部分が生じることがあります。これには、巣、ポロシティ、内包物、割れなどがあります。これらの状態は超音波の変化として示され、熟練したオペレータが超音波探傷器と適切な探触子を使用して識別することができます。

機器: EPOCHシリーズの探傷器(EPOCH XTEPOCH LTCEPOCH 600EPOCH 1000)はすべて鋳物の検査に使用できます。粗い鋳物表面に残ったカプラントからの反射を低減するため、および不規則な形状の不連続部分からの反射をできるかぎり改善するために、鋳物の試験にはDHCシリーズなどの(周波数1~5MHzの)二振動子型探触子がよく使用されます。場合によっては、斜角探触子を使用して割れを検出できます。自動スキャンを実行する特殊な試験システムでは、同じ周波数範囲の水浸型探触子を使用します。

手順: 粒子の境界によって生じる反射と、粒子サイズの拡大に応じて増大する粒子散乱ノイズ量のために、超音波探傷では、鉄鋳物と非鉄鋳物の両方で粒状性が欠陥の検出を難しくします。さらに、厚さ測定アプリケーションの場合と同様に、砂型鋳物で一般的に見られる粗い表面は音響カップリングを損ない、エコーの振幅を低下させます。試験で検出可能な欠陥の大きさは、これらの要因によって決まります。そのため、探触子の選択と測定器のセットアップは十分注意することが重要となります。推奨される手順は、探触子の選択とセットアップを最適化するために、破壊検査、放射線写真、またはその他の超音波以外の方法によって特定されている既知の欠陥を含む検査対象部品のサンプルとしての対比用試験片を利用することです。これらの既知の欠陥から得られた探傷波形を保存し、試験片から得られた探傷波形と比較します。EPOCH XTEPOCH LTC、およびEPOCH 1000のバンドパスフィルタリングは、粒子散乱ノイズの低減に非常に役立ちます。

図3と4に、EPOCH XTとDHC709-RM (5MHz、0.5インチ径)二振動子型探触子を使用した、40mm (1.6インチ)の鋳鉄品のポロシティについての典型的な試験を示します。図3では、画面右側に鋳物からの底面エコーが示され、通常の低レベルの表面ノイズと粒子ノイズが基準線に沿って示されています。図4は巣の欠陥があることを示しており、背景ノイズと比較してすぐに見分けることができます。

Good Casting Aea
図3 - 鋳物の良好な部分

Porosity Indication
図4 - ポロシティの表示

鋳物の最も一般的な探傷アプリケーションは巣、ポロシティ、および内包物を主な対象としていますが、割れや破断の検査も必要なアプリケーションもあります。割れ試験は、既知の欠陥または人為的に生じさせた欠陥を含む適切な対比用試験片を利用して、必ず、鋳物の特定の形状と、割れが疑われる場所、サイズ、および向きに対して検査手順を開発する必要があります。垂直ビーム探触子は、割れ面が探触子のカップリング表面に対して平行な場合に使用し、斜角探触子は、割れがカップリング表面に対して直角または傾斜している場合に使用します。鋳鉄品と非鉄鋳物では音速が遅くなるので、鉄に使用するウェッジの実際の屈折角度はより小さくなることに注意してください。通常の鉄用のウェッジを他の素材に対して使用する場合は、スネルの法則を使用してこれらの屈折角度を再計算する必要があります。

(c) 黒鉛球状化率の評価
鋳物製品の黒鉛のサイズと分布は、鉄の機械的強度に大きく影響します。黒鉛球状化率の評価は、自動車産業など、安全性が不可欠な構成部品に鋳鉄製品が使用されている分野で特に重要です。黒鉛球状化率は音速との関連付けが可能であるため、超音波による方法は黒鉛窮状化の程度を判定する非破壊的な方法です。これは顕微鏡による断面検査や抗張力試験の代わりとなります。

黒鉛球状化率の評価に推奨される機器は、35HPまたは38DL PLUS超音波厚さ計です。どちらも音速を直接表示できます。他の厚さ計またはEPOCHシリーズ探傷器を使用して、音速校正の手順によっても音速情報を取得することができます。この重要なテーマについては、アプリケーションノート「鋳鉄の黒鉛球状化率測定」に詳細な説明があります。機器と手順の詳しい説明について説明されています。

このアプリケーションや他の超音波試験アプリケーションでの探触子の選定と機器のセットアップについては、オリンパスNDTアプリケーションラボをご利用ください。

この用途に使用される製品

35

35はポケットサイズの精密厚さ計です。一振動子型探触子を用い、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、複合材料などの厚さ測定に使用できます。測定範囲は、0.08 mmから635.0 mmです。ライブ波形表示機能や測定調整機能を備えています。

35DL

ポケットサイズの35DLは、一振動子型探触子を使用して、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、および複合材料を精密に測定するハンディータイプ超音波厚さ計です。モデル35と同様の機能を備えていますが、データロガーを内蔵しています。

38DL PLUS

航空機エンジン検査認承:GE DFO P3TF22, P3TF30, P3TF31, P3TF35

EPOCH 1000 シリーズ

フェイズドアレイ機能(断面映像化)を搭載した高性能超音波探傷器です。

EPOCH LT

低価格ハンディータイプの超音波探傷器です。わずか38 mm(1.5インチ)の薄型探傷器です。

EPOCH LTC

わずか0.96 kgの堅牢でコンパクトな超音波探傷器です。マルチカラーVGAディスプレイ、PC用USB On-the-Go ポート、ダイナミックDAC/TVGは標準装備です。

EPOCH XT

数多くの機能を標準装備した高性能な超音波探傷器です。調整可能な矩形波パルサー、選択可能な狭帯域および広帯域のデジタルフィルターなど。

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