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渦流アレイチュートリアル

プローブパラメーター

検査性能を最大化させるために、有効な渦流プローブを設計する際には、考慮すべきいくつかの重要なパラメーターがあります。最も重要な要因として挙げられるのは検査の探傷範囲、感度、周波数、コストなどです。性能を最適化するためには、各種のプローブパラメーターの間でうまくバランスを取ることが重要です。たとえば、プローブの感度を上げるためには小型の高周波コイルが必要ですが、探傷範囲は小さくなります。逆に、探傷範囲を大きくしたければ大型の低周波コイルが必要となりますが、小さな欠陥への感度が低下します。従来の渦流検査と同様に、検査を成功させるためには正しいプローブ特性を選択することが重要です。

Probe parameters

Probe parameters

ここに:
n = チャンネル数
r = 分解能(コイル構成にも依存します)
C = 探傷範囲

プローブの構造

Probe parameters


渦流アレイプローブは、プローブの形状とコイルの構造を変化させることによって特定アプリケーション向けに最適化が可能です。大部分のコイルの構造は、それをアレイ構造へと発展させることが可能です。

シングルコイルプローブ

航空機の検査のために使用された最も初期の装置として、たとえばMagnaflux ED-500/ED520およびFoerster Defectometer(ブリッジタイプの装置ではなく、共鳴回路タイプ)を挙げることができますが、いずれもシングルコイルプローブを使用しています。これらのプローブは特定の特性値を持つように巻き上げられたシングルコイルを実装しており、それ以外のコイルを必要としませんでした。さらに時代が新しくなると、Hocking LocatorとFoerster Defectometerの新型モデルが導入され、このタイプの装置が多くのユーザーにとって便利な選択肢であり続けました。これらのプローブをブリッジ回路タイプの装置と組み合わせようとすれば、平衡コイルを併用しなければなりません。通常、平衡コイルはケーブルコネクターに組み込むか、または外付けアダプターとして使用します(図1参照)。

図1
プローブのインダクタンス値が平衡コイルのインダクタンス値に十分に近い値でない場合は、平衡コイル自体が問題を起こすことがあり、そのようなケースでは装置が正しく平衡化されません。特に、プローブと平衡コイルが別メーカー製である場合にこのような問題が起こりがちです。その結果として、性能が低い(ノイズが多い、感度が低い)、あるいは全く応答が得られない(信号が飽和)などの症状が現れます。

ブリッジ型プローブ

この方式では、プローブコイルが電気的「ブリッジ」回路の一部を構成します(図2参照)。通常はブリッジの平衡状態が保たれますが、平衡状態に何らかの変化が生ずると、その変化が信号として表示されます。

図2
この方式では、渦電流を作り出すことと、欠陥(または、他の何らかの変動要因)により引き起こされるインピーダンス変化の検出を同じコイルが行います。ほとんどの装置は、このタイプのコイル構成で動作可能です。

反射型プローブ

このタイプのプローブは送信-受信、または、ドライバーピックアップ方式とも呼ばれます。この方式では、装置の発振回路(ドライバー)に接続されたコイルが渦電流を作り出します。

図3
このプローブは、返ってくる信号を発信コイルとは別のコイル(ピックアップと呼びます)で検出します(図3、図4参照)。すべての新しいインピーダンス平面表示タイプの装置ばかりでなく、多くの旧型モデルも両方のモード(ブリッジ、反射)で動作します。両方のモードで動作するか否か不明の場合は、オリンパスまでお問い合わせください。

図4

ブリッジ方式と反射方式の選択

各検査用に最適なプローブを選択する際、ブリッジ方式と反射方式のどちらが良いのか検討する必要があります。両方式の特長を以下に挙げます。
ゲイン:反射方式のプローブの方が高いゲインが得られ、特に、特定の周波数に「チューニング」されているとゲインが高くなります。しかし、通常の差異は平均として6dB程度です。この差異によって信号は倍増しますが、装置自体でもこの程度のゲイン上昇は可能だと思われるかもしれません。しかし安全基準が非常に厳しいアプリケーションでは、この程度の増加も重要となります。
周波数レンジ:反射方式のプローブの場合は、ドライバーとピックアップコイルを平衡させる必要がありません。これは、より広い周波数レンジが使用できることを意味します。ドライバーが渦電流を作り出している間、ピックアップがそれを検出して、いくつかの信号を表示します。周波数によっては、表示される情報はそれほど有用とは言えませんが、プローブはそれでも動作しているのです。
旧来の装置では、ある限定された周波数範囲を与える目的でブリッジ方式のプローブが使用されました。このような装置では、ブリッジの他辺を使用して(XとRのコントロール)ブリッジ回路を平衡させる必要があったためです。より新しい装置では、固定精密抵抗でブリッジを構成するか、または、固定変成器をブリッジ内に含むのが普通です。この方式で検出された信号は「機械的」な調節操作を経ることなく電子的に処理されますから、より広い周波数レンジにわたって平衡を達成することができます。
ドリフト:プローブがドリフトを起こす原因の大部分はコイルの温度変化です。周囲温度の変化と発信器電流による発熱のいずれか、または両方がコイルの温度変化を引き起こします。線径や鉄心の選択など、何種類かの設計パラメーターを最適化することによってドリフトを小さくすることも可能ですが、ドリフトの影響をさらに小さくしたい場合は、反射方式のプローブを選択するのが良い方法です。
反射式プローブでは、ドライバー電流はピックアップコイルを流れません。実際、試料から返される磁界は、はるかに小さいのが通常ですから、ピックアップを流れる電流もそれに応じて小さくなります。ブリッジ方式、反射方式のどちらを使用しても、ほとんどあらゆる形状(ペンシル、スポット、リング、ボルト穴、など)のプローブを作ることができます。ただし、反射式プローブの方がほとんどの場合、製造が難しいため、価格も高くなります。

アブソリュート・プローブとディファレンシャル・プローブ

両者の理解には多くの混乱が見られます。多くのユーザーは、表示される信号が8の字を描いて上下に動くプローブを「ディファレンシャル」と呼んでいます。2つのコイルが交互に欠陥を検知するときに、このような信号が得られます。両方の検知コイルがプローブ表面上にあると、両者がリフトオフを補償し、その結果としてラインは表示されません(図5参照)。

図5
これに対して、一つの検知コイルのみから形成されるのがアブソリュート表示(図1から図4)であり、1本の、ほぼ水平に近いリフトオフラインで上方移動します。
他の一部のユーザーは、コイルが差動接続(たとえばブリッジ回路)されているプローブを「ディファレンシャル」と呼んでいます。反射式システムであっても、二つのピックアップを使用するシステムと同じようにプローブを差動接続することが可能であることから、このような定義上の問題が起こります(大部分のスキャナー駆動ボルト穴プローブがその例です)。このケースでは、相互に隣接した二つのピックアップコイルがドライバーコイル内に収められています(図6参照)。
このような定義上の混乱を解消する最良の方法は、プローブの形式を、たとえばブリッジ-ディファレンシャル、アブソリュート、反射-ディファレンシャルーアブソリュートのように、より具体的に指定することです。あるいは、表示される信号の形態に応じて区別する方が分かりやすいかもしれません。なぜならば、実際的に意味をもつのは表示される波形であり、コイルがどのように内部接続されているのかを問題にするユーザーはそれほど多くはないからです。

プローブシールドの有無

通常、プローブはシールド付きとシールド無しの両バージョンが提供されていますが、シールド付きタイプへの需要が高くなってきています。シールドを施すことによってコイルが作り出す磁界の広がりをプローブの物理的サイズと同じレベルか、または、それよりも小さく制限することができます。シールドは何通りもの材料で作成できますが、フェライト(酸化鉄セラミック)、Mumetal®、軟鋼が最も頻繁に使用されます。
最良のシールド効果を発揮するのは、磁界が通りやすく、かつ導電率が小さいという特性を持つフェライトです。この特性により、シールド自体による渦電流損失がほとんど起こりません。軟鋼は、損失がフェライトよりも大きいという問題はありますが、加工性が良いことからスポットプローブやリングプローブ用として広く用いられており、また、適当なサイズや形状のフェライトが入手できない場合にも使用されています。Mumetal® は、薄いシート状で入手可能であることから、ペンシルプローブに使用されることがあります。ただし、効果はフェライトよりも劣ります。
シールドを施すことにより、何通りもの利点が得られます。 その第一として、試験体の形状が変化する部位(たとえばエッジ)にプローブを移動/近接させても誤った指示値を示しません。次に、鉄のファスナーヘッドにプローブが触れたとしてもほとんど干渉を起こしません。また、小さな領域に強い磁界が集中しますから、より小さな欠陥の検出が可能になります。
その一方、シールドを施さないプローブは磁界の広がりが大きくなるため、より深い浸透力を得ることができます。リフトオフへの許容度も若干大きくなります。鉄鋼材(鋼)の表面割れを、特にメーター指示計器で検査する場合は、シールドされていないプローブの使用をお奨めします。その理由は、シールドされたプローブは感知面積が小さくなるため、これを通常のスキャン速度で使用するとメーターの指示応答が遅くなりすぎて信号変化を表示できなくなるからです。

アダプター

装置が実装しているのとは異なるタイプのコネクターを使用してプローブを接続する際は、適切なアダプターが必要となります。二つの異種コネクターが接合/配線されたアダプターを介して、仕様の異なる入力コネクターと出力コネクターを接続します。通常、アダプターは小さなハウジング形状をしており、装置の入力コネクターに取り付けることができます。しかし、ケーブルタイプのアダプターもありますから、その場合はプローブ本体にあるコネクターにアダプターを接続させます。装置側の配線方法により、1個のアダプターでブリッジ方式と反射方式に対応できることもありますが、別々に2個のアダプター、あるいは、スイッチ切換式アダプターが必要になることもあります。

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