品質マネジメントシステムの測定に対する要求事項と解説

ISO 9001:2015IATF 16949:2016ISO 13485:2016

概要

ISO 9001:2015は品質マネジメントシステムに関する国際規格です。対象組織は業種・業態を問わず、あらゆる組織が利用し認証を取得することができ、全世界で普及しています。
ISO 9001:2015では、計量トレーサビリティに対する要求事項が記載されています。ISO/IEC 17025:2017校正を行うことで、 この要求を満たすことができます。
 

規格の構成と測定に対する要求事項

構成

10項目で構成されており、測定に関する要求は7.支援で言及されています。

まえがき 5 リーダーシーップ
序文 6 計画
1 適用範囲 7 支援
2 引用規格 8 運用
3 用語及び定義 9 パフォーマンス評価
4 組織の状況 10 改善
 

測定に関する要求

「7.支援」はさらに5つの項目で構成され、「7.1資源」の「7.1.5.監視および測定のための資源」で詳細が確認できます。

7.支援 7.1 資源
7.2 力量
7.3 認識
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化した情報

 
7.1 資源 7.1.1 一般
7.1.2 人々
7.1.3 インフラストラクチャー
7.1.4 プロセスの運用に関する環境
7.1.5 監視及び測定のための資源
7.1.6 組織の知識

 

測定に対する要求事項

ISO 9001:2015の測定に対する要求事項を規格本文からの引用を用いて解説します。

7.1.5.1 一般
要求事項に対する製品及びサービスの適合を検証するために監視又は測定を用いる場合、組織は、結果が妥当で信頼できるものであることを確実にするために必要な資源を明確にし、提供しなければならない。
組織は、用意した資源が次の事項を満たすことを確実にしなければならない。
a) 実施される個別の方式の監視及び測定に適切である
b) それらの目的に対する引き続く適合を確実にするために維持される。
組織は、監視及び測定資源の目的への適合の証拠とし て適切な文書化した情報を保持しなければならない。*1
 

POINT

  • 監視、測定の結果の信頼性と妥当性を確保するために、資源を明確にして、適切に管理する必要があります。
    資源とは、監視・測定する製品、建物・部屋、環境(温度、湿度、防振)、スケール、キャリブレーションサンプル、作業手順やノウハウなどを指します。
  • 目的への適合の証拠として適切な文書化した情報を保持する必要があります。
    校正記録、検証記録、調整記録、力量の証拠、教育訓練記録などがあります。


7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合、又は、組織がそれを測定結果の妥当性に信頼を与えるための不可欠な要素とみなす場合には、測定機器は、次の事項を満たす必要があります。
a) 定められた間隔で又は使用前に、国際計量標準又は国家計量標準に対してトレーサブルなである計量標準に照らして校正若しくは検証、又は、それらの両方を 行う。そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いたよりどころを、文書化した情報として保持する。
b) それらの状態を明確にするために識別を行う。
c) 校正の状態及びそれ以降の測定結果が無効になってしまうような調整、損傷又は劣化から保護する。
測定機器が意図した目的に適していないことが判明した場合、組織は、それまでに測定した結果の妥当性を損なうものであるか否かを明確にし、必要に応じて、適切な処置をとらなければならない。*1
 

POINT

  • 次の場合は、測定機器はトレーサビリティを満たすようにする必要があります。
    a) 顧客や法規制によってトレーサビリティが要求されている場合
    b) 製品を測定し、それによって品質保証している場合

    ISO 9001の用語はISO 9000を引用しており、ISO 9000では「トレーサビリティ:計量計測の分野においては、ISO/IEC Guide 99に記載する定義が受け入れられている。*2」と記載されています。ISO/IEC Guide 99の定義は以下となります。

    ISO/IEC Guide 99 トレーサビリティ
    個々の校正が不確かさに寄与する、切れ目なく連鎖した、文書化された校正を通して、測定結果を参照基準に関係づけることができる測定結果の性質。*3  
     
  • 測定機器は次の事項を満たす必要があります。
    a)定められた間隔*4で又は使用前に、国際計量標準又は国家計量標準に対してトレーサブルである計量標準に照らして校正若しくは検証*5、又は、それらの両方を 行う。
    b)校正状態の識別を行う(校正実施日、有効期限のラベル表示)。
    c)測定機器の保管場所、温湿度条件などの保護を行う。
     
  • 測定機器が意図した目的に適していないことが判明した場合(校正結果外れが判明した場合)、組織はそれまでに測定した結果の妥当性を損なうものであるか否かを明確にし、必要に応じて適切な処置をとらなければなりません。


*1 ISO 9001:2015から引用
*2 ISO 9000から引用
*3 ISO/IEC Guide 99
*4 組織が定めた間隔(1回/年や1回/2年など)
*5 校正は計量標準に対するトレーサビリティ、検証は測定機器が使用可能であることの証明を与えること

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