概要
TERRA IIポータブルX線回折装置TERRA IIは世界初の商用バッテリー駆動式ポータブルX線回折装置の後継機です。最大6時間のバッテリー寿命と堅牢で耐候性に優れたケースを備え、主要成分や微量成分を現場で迅速に分析できるように設計されています。 従来のX線回折装置に代わり、ポータブルかつ軽量で実質的にメンテナンス不要の装置です。
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![]() | スピードと感度の向上により迅速な判断が可能に強力で直感的なソフトウェアと改良されたX線検出器の組み合わせにより、感度の向上、分析時間の短縮、信頼性の高い結果が得られます。
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簡単な試料準備従来の装置では、結晶配向のランダム性を十分確保するために、試料をできるだけ細かく潰してペレット化する必要がありました。 一方、TERRA IIでは、小型の振動式試料ホルダーが試料チャンバー内ですべての粒子を対流させることにより、結晶配向のランダム性を確保しています。 その結果、付属の試料キットを使用することで、わずか15 mgの粉体試料で分析ができます。 | ![]() |
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SwiftMin
X線回折(XRD)データ | 蛍光X線(XRF)データ |
検索/マッチおよびXRD定量分析 XRF定性分析スキャン
X線回折分析ソフトウェア XPowder
TERRAには、X線回折データを分析するためのXPowderソフトウェアが標準搭載されており、AMCSD(American Mineralogist Crystal Structure Database)の鉱物データベースが含まれています。XPowderソフトウェアは、全パターン分析による結晶同定機能と相対強度比(RIR: Relative Intensity Ratio)による定量機能を装備しています。さらに、TERRAはX線回折パターンを外部のプログラムで簡単に読むことができるように、複数のファイル形式に対応しています。
ワイヤレス接続
TERRAは本体内蔵のソフトウェアで動作します。ユーザーは、ワイヤレス接続(802.11b/g)により本体にアクセスでき、装置の制御およびデータ処理をスムーズに行うことができます。
仕様
XRD測定範囲 | 5-55° 2θ |
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検出器タイプ | 1024 × 256ピクセル、2D ペルチェ冷却 |
試料粒径 | <150 μmの粉砕鉱物 (メッシュ径#100、150 μmのふるい) |
試料量 | ~15 mg |
X線ターゲット材 | CuまたはCo(標準:Cu) |
X線管電圧 | 30 kV |
X線管電力 | 10 W |
データ保存 | 240 GB(内蔵ハードドライブ) |
ワイヤレス接続方式 | 802.11b/g(ウェブブラウザ経由のリモート通信) |
動作環境温度 | -10°C ~ 35°C |
質量 | 14.5 kg(バッテリー4個を含む) |
寸法 | 48.5 cm × 39.2 cm × 19.2 cm |
筐体 | 防塵・防水性能規格IP67、MIL C-4150J補強ケース |
バッテリー持続時間 | 4–6(ホットスワップ機能搭載) |
用途/事例
ポータブルX線回折装置TERRAは、蛍光X線分析機能も装備しています。TERRAは、地球化学探査から、鉱山等級評価、冶金・生産管理、現場での危険物質の検出や、偽の医薬品の確認作業まで使用されています。TERRAの可搬性と優れた機能により、現場で定量的な化学的組成分析を迅速に実施することができます。
※以下の用途/事例には海外での事例を多く含むため、日本国内の法令に適合していない場合もあります。
採掘と鉱石(Mining &Ores)
鉄鉱石
Xpowederソフトウェアの相対強度比(RIR)法を用いると、例えば、赤鉄鉱、針鉄鉱、磁鉄鉱など鉄分を多く含む鉄鉱石が、特定の結晶方位が全く存在しない場合にも、サンプルの組成を自動的に定量化します。- 石炭に含まれる方解石(Calcite)
方解石は石化燃料を使用する工場の原材料燃料の効率を減少させる指標となり、その管理により、燃料効率の向上と地球温暖化の原因となる炭酸ガス放出の減少をもたらします。 - 炭酸カリウム
鉱物位相同定とカリ岩塩、岩塩、ラングバイナイト、レオナイトなどの同定された物質の半定量分析が行えます。さらに分析が必要な場合は、サイトロニクス社のSIROQUANT定量位相解析プログラムも使用できます。 - 石灰石とセメント(Limestone & Cement)
石灰石に関連した汎用鉱物、α-石英、アスベスト鉱物、方解石、苦灰岩(ドロマイト)などの簡易定量分析を行えます。採石場が多様なレベルの苦灰岩(ドロマイト)を含む場合、TERRAでは0.5%から9.0%までの苦灰岩を分析した実績があります。
石油資源(Petrochemical)
- 泥水検層
現場で頁岩の掘りくずに含まれる鉱物の識別と定量化を行い、坑井採掘の現場へ迅速なフィードバックを行うのに役立ちます。鉱山地層での鉱脈探査です。 - パイプライン
TERRAはS/Nに優れたデータを提供し、パイプラインの表面に浮き出た錆びの識別と定量に役立ちます。同時に蛍光X線により構成元素の同定も行えます。 - 有用でない鉱石(尾鉱)の再評価をおこない、採掘の産出量や過去に使用された鉱山の評価を行うのに役立ちます。
現場での危険物判定(Fast HAZMAT ID)
- 現場で、地域またはグローバルな危機管理のために危険物の迅速な識別に役立ちます。
- 現場で、爆発や溶け出す可能性のある物質および促進剤の識別に役立ちます。
- 危険性のある物質の識別に役立ちます:アジ化鉛のペンスリット(PETN)、黒色火薬に使用される塩素酸カリウム(KClO3)、過塩素酸カリウム(KClO4)および硝酸カリウム(KNO3)、閃光粉に使用される塩素酸カリウム(KClO3)とカスカンダイト鉱石。
- 現場で断熱材に含まれるアスベストを迅速に識別するのに役立ちます。
製薬
偽の医薬品の迅速な識別に役立つ情報を提供します。
- 医薬品および薬剤を生成する前段階の物質(プリカーサー)にて迅速で非破壊の照合作業に役立ちます。
- 材料に含まれる有効・非有効物質や異物・代替物質の有無と量について役立つ情報を提供します。
- 合法的な医薬品かどうかの確認に役立つ情報を提供します。
オリンパスXRD
オリンパスのX線回折装置の仕組みオリンパスのX線回折装置は、独自の方法でX線回折データを迅速かつ容易に収集し、処理します。
オリンパスの装置では、従来のゴニオメーターベースのX線回折モデルで使用されている反射型回折ではなく、透過型回折を採用しています(上の図を参照)。 可動部品を使わずに、独自の振動型試料ホルダーによって、ランダム化を実現しています。 このホルダーは、粉末をランダム化させる(粉体液状化と呼ばれる)一定周波数を生成します。 以下の図に示すように、粉末はマイラーまたはカプトンのいずれか2枚のウインドウの間に入れられます。 ![]() オリンパス独自の対流技法のおかげで、チャンバー内のすべての試料粒子が30秒以内にあらゆる方向にX線ビームを通過します。 この方法で、オリンパスのX線回折装置は、正確なX線回折の重要な要素である100%のランダム化を実現します。 わずか15 mgの試料で解析可能なオリンパスのX線回折装置は、2θ範囲全体を同時に収集できます。 可動部品がないことも、信頼性が高い解析と実質的なメンテナンスフリーに寄与しています。 |