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外部腐食マッピングへのHydroFORMの使用


はじめに

炭素鋼パイプの内外表面は、環境に関係なく時間を経ると腐食していきます。 パイプの健全性を評価しモニタリングするためには、この腐食を定期的に検査する必要があります。

HydroFORM®腐食スキャナーは、パイプの残存肉厚を測定する際に特に便利です。 OmniScan®探傷器などのフェーズドアレイ装置と併用する場合、HydroFORMスキャナーは内外表面反射を考慮に入れることで精度の高い残存肉厚測定を行うため、効率的な腐食検査が可能です。 OmniScan探傷器は超音波反射を解析し、内外表面のエコーの遅延を計算して、1 mm × 1 mmのポイントごとに残存肉厚値を表示します。

HydroFORM腐食スキャナー

しかし、状況によっては検査者が外部腐食のみを測定したい場合や、内外の腐食が残存肉厚値に及ぼす影響を区別したい場合があります。

課題

ピットゲージなどを使用して表面を手動で測定するのは時間がかかり、作業員によるところが大きくなります。 測定結果はユーザーごとに、そして検査のたびに異なる可能性があります。 検査者にとって、より速く効率的な検査を行うための信頼性のある方法が必要です。 外部腐食の測定にレーザーを使用するには、機器とトレーニングに多額の投資が必要になります。 その上、レーザー検査はパイプの内部表面には実施できないため、パイプの健全性を完全に評価することができません。 これらの制約は、レーザー検査には複数のシステムやテクノロジーでサポートする必要があることを意味し、トレーニング、データ管理、検査チームの調整という課題につながります。

対処方法

HydroFORMスキャナーは、パイプの内部腐食を検査するための実績豊富なソリューションです。 ウエッジを必要としない給水柱機能を備えたHydroFORMスキャナーでは、フェーズドアレイ局部水浸検査を行うことができます。 粗い表面上でも、優れた表面密着性と最適なカップリング状態が得られます。

HydroFORMスキャナーをマルチグループ装置と併用すると、1回のスキャンで内部腐食(残存肉厚)と同時に外部腐食をマッピングすることができます。 第1グループは内部腐食用に最適化し、第2グループ(同じプローブを使用)は外部腐食マッピング用に最適化します。 これによって2つの個別のC-スキャンを実行でき、OmniScan探傷器での直接分析や、OmniPC ソフトウェアを使用するコンピューターでの分析、またはCSV形式で別々にエクスポートもできます。 データ収集後の処理にはスプレッドシートソフトウェアを使用できます。

標準的な手順

外部腐食マッピングの手順は一般的なHydroFORM®スキャナーの用途と似ていますが、パラメーターがやや異なります。

まず、第1グループのフォーカルロウ設定を「Linear at 0°」ではなく「Linear」に設定して、内部腐食(残存肉厚)グループを作成する必要があります。 検査角度は0°です。

フォーカルロウ設定を「Linear」に設定
図1:フォーカルロウ設定を「Linear」に設定

次に、外部腐食用の第2グループを作成するには、第1グループの設定をコピーして、ウエッジパラメーターを「Contact」に変更します。 この設定によって、給水柱を使用してパイプの外部表面を検査できるようになります。

Olympus TERRA portable XRD analyzer.
図2:「Contact」ウエッジを選択

振動素子数をビームあたり1素子に設定します。

Olympus TERRA portable XRD analyzer.
図3:ビームあたりの振動素子数を1に設定

最初と最後の素子は以下の式に従って設定して、どちらのグループも同じ合計素子数を持ち、試験体の同じ位置が検査対象になるようにする必要があります。

最初の振動素子: 振動素子数(第1グループ)
2

最後の振動素子:プローブの振動素子の合計数— 振動素子数(第1グループ)
2

下の例(図 4)では、第1グループに4つの素子が使用されていたため、第2グループの最初と最後の振動素子は、それぞれ2と62に設定されました。

図4:最初と最後の振動素子を設定
図4:最初と最後の振動素子を設定

ビームあたりの素子数が1つだけではビームを集束できないため、集束深さのパラメーターは関係しません。 レポートの作成上、このパラメーターは「Unfocused」に設定します。

図5:集束深さを「Unfocused」に設定
図5:集束深さを「Unfocused」に設定

給水の値を入力するために速度を調整する必要があります(1480 m/sまたは0.0583インチ/μs)。 こうすることで、深さの値の精度が高まります。

図6:ウエッジ遅延と速度を調整
図6:ウエッジ遅延と速度を調整

プローブはパイプの腐食がないエリアに配置され、ウエッジ遅延が手動で調整されているため、前壁は0 mmです。

図7:ウエッジ遅延を使用して前壁を0 mmに設定
図7:ウエッジ遅延を使用して前壁を0 mmに設定

  • 試験体の表面のみが考慮に入れられ、水中での超音波減衰はわずかしかないため、第2グループでは時間補正ゲイン(TCG)は必要ありません。
  • 外部腐食グループにはゲート同期を使用できないため、オリンパスHydroFORM®とMapROVER™のスキャナーアセンブリーなどの安定したプローブホルダーシステムを使用することが重要です。 さらに、不安定なプローブホルダーシステムが試験体の大きなくぼみに落ち込むと、公称基準が失われる恐れがあります。
  • リニアモードではスキャンラインを重複することはできません。 したがって、第1グループ(内部腐食)のスキャン>検査領域メニューのインデックス軸終了位置パラメーターでインデックスデルタに留意して、機器のインデックスステップを正しく設定することが重要です。
    図8:インデックスデルタ
    図8:インデックスデルタ

結果

腐食したサンプルの腐食データ

検査されたサンプルは外径20インチ(508 mm)のパイプで、公称壁厚さ0.35インチ(9 mm)、内外表面に腐食が見られました。 スキャンは、HydroFORMスキャナーとMapROVER自動スキャナーから構成されるアセンブリーを使用し、外径上で円周軸に対して実施されました。 表面は1 mm × 1 mmの分解能で検査されました。

図9:20インチ径パイプの検査
図9:20インチ径パイプの検査

腐食を可視化するためにS-スキャンビューとC-スキャンビューを使用しました。 第1グループのC-スキャン(図 10)では、内部腐食を考慮に入れて残存肉厚値を可視化しました。 C-スキャン内の青色は公称厚さを表し、色が黄色からオレンジ色、赤色へと進むにつれて残存肉厚が薄くなります。 C-スキャンには、非同期データを識別可能なエリアが4つあります。 これらのエリアは、外部腐食によって超音波信号が乱れる場所を表しています。

図10:外部腐食によって信号が乱れている残存肉厚を表すC-スキャン
図10:外部腐食によって信号が乱れている残存肉厚を表すC-スキャン

第2グループについては、S-スキャン (図12)とC-スキャン(図11) の両方で外部腐食を確認できます。 カスタムカラーパレット(標準的な腐食検査用パレット)を使用したこの例では、色が赤くなるほど外部腐食が深くなっています。 外部腐食は容易に識別でき、第1グループで取得された残存肉厚のC-スキャンと相関しています。

図11:HydroFORMスキャナーによる外部腐食のC-スキャン
図11:HydroFORMスキャナーによる外部腐食のC-スキャン
 
図12:HydroFORMスキャナーで取得された外部腐食のS-スキャン例
図12:HydroFORMスキャナーで取得された外部腐食のS-スキャン例

結論

オリンパスHydroFORMスキャナーを使用するこの新しい検査手順によって、通常の内部腐食 / 残存肉厚検査時に外部腐食をマッピングできるようになりました。 外部腐食測定用に最適化された第2グループは、OmniScan MX2探傷器を使用して作成できます。 外部腐食および内部腐食(残存肉厚)データは、詳細な解析のためにCSV形式でエクスポートすることもできます。 この方法を採用することで、腐食検査の実施にかかる時間を短縮し、複数の検査法を使用する場合に必要なトレーニングや投資を回避することができます。

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