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渦流による炭素鋼パイプの硬点(局所的硬化)の検出


はじめに

パイプラインの健全性を保持するためには、炭素鋼パイプの硬点(局所的硬化)を検出し、その特性を把握することが極めて重要です。この目的のため、オリンパスは、高感度渦流プローブとECAモジュールを搭載したOmniScan MX探傷器を組み合わせたソリューションを開発しました。

課題

パイプラインの局所的硬化は主として次の2通りの過程によって発生します。その一つは製造プロセスにおける意図せぬ焼入れの発生であり、他方は作業の過程での偶発的な冷間加工(圧痕)の発生です。焼入れは鋼パイプの冶金学的構造を変化させ、具体的にはマルテンサイト(鋼の形態の一つであり、非常に高い硬度を持つ)を発生させます。また、冷間加工は局在化した残留応力を発生させます。どちらの場合も、硬化した部位がパイプ中に局所的に存在すると、そこが起点となって水素応力割れ(HSC)を誘起する可能性があります。

強磁性体(たとえば炭素鋼)のパイプの場合、冶金学的構造の変化や残留応力の存在によって透磁率が影響を受けます。この特性を利用することにより、渦流による硬点の検出と特性評価が可能になります。

解決方法

オリンパスのソリューションは、炭素鋼部材中の透磁率変化に対して極めて高い感度を持つように特別に設計された渦流プローブを使用します。

このソリューションでは、エンコードされた2軸位置情報をOmniScan MX ECA(図1)へ伝送するために2次元スキャナーを使用する必要があります。まず、オペレーターは、炭素鋼パイプ上の渦流プローブのバランスをとり、動作点をインピーダンス平面の中心に合わせ込みます。次に、スキャナーを使用してパイプ表面を走査します。透磁率が変化した部位をプローブが走査すると動作点の位置が変化し、その結果がOmniScan MX ECAのC-スキャン、インピーダンス平面、ストリップチャート上に表示されます。

図1. OmniScan MX ECA探傷器、2軸スキャナー、および渦流プローブから構成されるシステム

結果

予め加熱した後、異なる温度で局所的に焼入れを施した複数の炭素鋼プレートを対象として、この技法をテストしました。その結果として得られたC-スキャンを下に示します(図2)。C-スキャンは、垂直成分である電圧の値に応じて色を変化させることにより、色分けマッピングされています。白色と青色は電圧が非常に低いことを示しており、鋼部材の透磁率が通常値であることに対応します。一方、ピンクと赤色の部分は電圧が高いことを示し、部材の透磁率が変化したことを表しています。硬点(明るいピンクと赤色の部分)がC-スキャン上に明瞭に示されており、この画像から位置と大きさを測定することができます。硬点で観測される電圧強度は透磁率変化の大きさと硬化の程度を表しています。

図2. 水焼入れにより発生した硬点のC-スキャン画像

圧痕を持つパイプについても、この技法のテストを行いました。圧痕を含む領域を渦流プローブで走査して得られたC-スキャンを下に示します(図3)。透磁率が変化したゾーンは緑色(電圧が高い)で表示され、損傷を受けていないパイプ部位の透磁率は白色と青色(電圧が低い)で示されています。この測定では、損傷を受けた部分でもプローブが常に表面に密着するように特に注意が必要です。

図3. 偶発冷間加工(圧痕)により発生した硬点のC-スキャン画像

結論

オリンパスは、炭素鋼パイプの硬点を検出して特性を把握するために高い効果を示すソリューションを開発しました。上記の通り、このソリューションでは、特殊設計された高感度渦流プローブとOmniScan MX ECA探傷器を組み合わせて使用します。

Olympus IMS

この用途に使用される製品
渦流アレイ探傷を行います。 検査の構成では、ブリッジあるいは送受信モードで32のセンサーコイル(外部マルチプレクサーの使用で最大64センサーコイル)に対応します。 使用周波数は20 Hz~6 MHzで、同時に多重周波数を使用するオプションもあります。
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