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事例・お役立ち資料

Frequently Asked Questions about TFM

TFMに関するQ&A

Q:TFMとは何ですか。FMCとどのような関係がありますか。

A:トータルフォーカシングメソッド(TFM)は従来のフェーズドアレイ(PAUT)とステアリングとフォーカシングの方法は基本的に同じですが、焦点化が一定の深さだけではなく、関心領域(「TFMゾーン」)のあらゆる場所に適用される点が異なります。 TFMは関心領域のすべての位置で集束された音響ビームを物理的に発射することで実行できますが、収集サイクルを完了させるには極めて長い時間がかかります。

非破壊検査(NDT)で使用する音波は直線状なので、送受信において特定のビームを生成する音波の物理的な重ね合わせ(ビーム形成)は、データ収集後のビーム合成によって複製できます。 物理的なビーム形成に対応するTFMビーム合成を実行するには、プローブの送受信開口部から基本的なA-スキャンをすべて収集する必要があります。 すべての集束ビームを計算するには、この基本A-スキャンの完全なデータセットが必要です。 このデータセットを収集するために、フルマトリックスキャプチャ(FMC)によるデータ収集を行います。

Q:TFMの作用を教えてください。

A:まずユーザーはTFMゾーンを区切るパラメーターを入力します。TFMゾーンとは、検査対象域、つまり関心領域(ROI)のことです。 TFMゾーンがグリッドに分けられ、グリッド内の各位置(ピクセル)のサイズ(グリッド解像度)はユーザーが決定します。 FMCデータを理解するため、TFMアルゴリズムは音響伝搬モードや分解能などの重要な変数を入力して、データを波形セットに分類します。 例えば、TT-Tの波形セットは、送信された横波が内部の表面で反射した後、ROIの各ピクセルに到達し、各ピクセルから受信素子への直接経路の横波として伝搬します。

TFMゾーンパラメーターの設定

Q:FMCとは何ですか。どのように機能しますか。

A:フルマトリックスキャプチャ(FMC)音響データ収集では、FMCデータセットが得られます。 FMCデータセットとは、フェーズドアレイプローブまたは配置された複数プローブの各素子からの発信によって取得される、基本的な受信A-スキャンのすべての組み合わせを集めたものです。 この方法では、プローブの各素子から連続して照射する一方で、その他すべての素子は戻ってきた音響ビームを受信します。

処理におけるFMCとTFMについてビデオをご覧ください。

Q:FMCデータセットの処理にTFMを使用するのはなぜですか。
あるいは(その逆に)
Q:TFM画像の生成にFMC戦略を使うのはなぜですか。

FMCデータセットにはあらゆるビーム形成方法を適用することができます。 FMC生データ(基本A-スキャン)を使用して、標準のフェーズドアレイ(PA)データ収集を合成的にエミュレートすることもできます。 ただし、PAによるビーム形成方法では、試験体の特定の深さのみにビームを集束しますが、TFMでは関心領域(「TFMゾーン」)全体の音響振幅を表示でき、領域内のすべてのピクセル位置が集束されます。 完全に集束された関心領域を収集できることが、FMCデータの処理にTFMを使用する主な理由です。

反対に、NDT用途に対応する速さでTFM画像を取得するには、FMCのデータ収集法を使用する必要があります。 TFM画像を計算するには、開口幅の基本A-スキャンの完全なセットが必要です。 同一のFMCデータセットが、異なる波形セットを示す複数のTFM画像のソースとなる可能性があります。

Q:超音波探傷器OmniScan X3シリーズの未処理のFMC(フルマトリックスキャプチャ)生データセットにアクセスできますか。

A:この投稿日現在では、不可能です。 ただし、オリンパスではOmniScan X3シリーズ用の新たなソリューションを継続して開発していますので、ご期待ください。

Q:縦方向の反射源のイメージングにはどの音響伝播モードを使用すればよいですか。

A:いくつかのモード(波形セット)で、縦方向の反射源に対する表示が良好になる傾向があります。 TTT-TTまたはTT-T波形セットを使用してセルフタンデムモードで始めることをお勧めします。 ただし問題は、1つの波形セットが表示するのは一般に縦方向の反射源の一部だけであることです。 TL-Tなどの追加の波形セットは、選択された最初のモードによって取得された画像で表示できない部位を画像化する補完的な活用で役立ちます。T-TやTT-TTなどのパルスエコー波形セットは、コーナートラップエコーや回折端部の検出に使用できます。

適切なイメージングと検出に役立つ1つの方法は、各伝搬モードの特徴と、長所、短所を完全に把握するために、超音波探傷器OmniScan™ X3のAcoustic Influence Map(AIM)機能を実験的な検証とともに使用することです。 期待される結果を得るには、検査対象の素材の厚さと速度を正確に評価する必要があります。セルフタンデムモードの使用は難しい場合があることに留意してください。

AIMモデリングツール:反射源角度の調整に従ってAIMモデリングが変化します

Acoustic Influence Mapの詳細は、ホワイトペーパー「TFM Acoustic Influence Map」をご覧ください。

Q:TFMでHydroFORM™スキャナーを使用できますか。

A:残念ながら、水柱が一定である非常に特殊な用途を除き、使用できません。 HydroFORMスキャナーはトータルフォーカシングメソッドで使用することはできません。 水と検査対象の素材との音速差のため、非常にわずかな水柱の変化が、素材内の比較的大きな超音波経路の偏差につながります。 例えば、0.5 mmの水柱の移動は最終的に2 mmの炭素鋼の経路差に対応し、TFMの集束能力に悪影響を及ぼします。 ただし、新しいソリューションを継続的に開発中ですので、ご期待ください。

Q:OmniScan X3シリーズのTFMエンベロープ機能の利点は何ですか。

A:TFMエンベロープを使用する最も明らかな利点は、自然振動する音波A-スキャンを基本データセットとして使い振幅振動を切り捨てることです。 振動から解放されるため振幅が連続的になり、サイジングしやすくなります。

さらに、TFMエンベロープ画像は標準振動TFMより速いデータ収集速度で取得でき、振幅忠実度(AF)値は同じままです。 以下の例では、エンベロープがオフ(上)の場合とオン(下)の場合の高温水素浸食(HTHA)欠陥を示しています。 TFMエンベロープ機能がオンの場合、グリッド解像度は粗い場合があるものの、振幅忠実性は2 dB未満(標準許容誤差)を保ち、データ収集速度は加速しています。 この2つの画像を比較すると、エンベロープをオンにした方が欠陥エコーを識別しやすくなっています。 振動に対してより安定していることから、TFMエンベロープ画像では欠陥の識別と振幅ベースのサイジングが容易になります。

TFMエンベロープの詳細は、ホワイトペーパー「エンベロープ機能を利用したトータルフォーカシングメソッドの使用」をご覧ください。

フェーズドアレイ探傷器OmniScan X3で得られた、HTHAの標準TFM(トータルフォーカシングメソッド)画像

HTHA欠陥の標準TFM画像(グリッド解像度0.07 mm、AF 1.7 dB、データ収集速度10.6 Hz)


エンベロープをオンにした場合のHTHA欠陥

HTHA欠陥のTFMエンベロープ画像(グリッド解像度0.15 mm、AF 1.9 dB、データ収集速度19.5 Hz)

Q:同じ探傷器モデルとプローブを使用する場合に、TFMではPAの倍の素子数を含む開口幅を使用できるのはなぜですか。

A:これは、TFMイメージングがFMCデータを使用して行われるためです。 OmniScan X3シリーズの探傷器におけるFMCデータ収集は、必要な場合に2セットに分割できます。例えば、64チャンネル探傷器(OmniScan X3 64モデルなど)で128素子を含むフェーズドアレイプローブを使用する場合です。

仕組みとしては、まず探傷器が単一素子をパルス発信させ、戻ってきた超音波を素子の最初の半分で受信します。 次に、その素子をもう一度発信させて、今度は素子の後半で受信します。 この二重発信シーケンスをプローブ内のすべての素子で繰り返すことで、全素子からデータを高速で収集します。

TFMをPAと比較するために、先ほどのOmniScan X3 64探傷器と128素子プローブの例で考えます。 PAデータ収集モードでは、一度に発信/受信できるのはプローブの64素子のみです。 PAの信号処理は、探傷器のチャンネル数(この例では64)に制限されます。 TFMのデータ処理はFMCデータに基づいて行われるため、プローブの128素子すべてを使用してデータを収集でき、PAと比べて開口幅が実質的に倍になります。

Q:スキャンプランにおいて、TFMモードではビームのカラーマップが表示できる一方、フェーズドアレイ超音波モード(PAUT)では表示できないのはなぜですか。

A:この投稿日現在では、AIM機能(Acoustic Influence Map)はTFMモードでのみ使用可能です。 ただし、新しいソリューションを継続的に開発中ですので、ご期待ください。

Q:グリッドの解像度を下げる必要があるのは、どのような場合ですか。

A:ピクセル数が非常に多い(グリッド解像度が高い)とTFM画像が改善される可能性がありますが、処理の負荷によりデータ収集速度が低下します。 ユーザーは、効率を損なわない高い検出力と特性評価力を持つ「スイートスポット」(最適な妥協点)をターゲットにする必要があります。 OmniScan X3シリーズ探傷器は、横波(T波)と縦波(L波)の両方について、試料のプローブ中心周波数に応じてグリッド解像度を分析できる有用な測定値を提供します。 別の測定値は、選択された音響モードとグリッド解像度に応じた振幅忠実度(AF)の理論値を提供します。 いくつかの新しいFMC/TFMの規格および標準では、オペレーターがグリッド解像度を定義して2 dB以下のAF値を取得する必要があるため、この測定値は非常に役立ちます。 オペレーターはAF値を実験的に測定する面倒なプロセスを回避できます。

Q:パルスエコー、セルフタンデム、およびピッチキャッチの各伝搬モードの違いは何ですか。

A:パルスエコーは、送信ビームと受信ビームが試験体内でまったく同じ経路をたどる伝搬モードです。 パルスエコーモードは直接の経路(スキップなし)または複数のスキップで実施できます。 これらは伝搬経路の各レグの縦波または横波(LまたはT)による音波のモードで定義されます(L-L、T-T、LL-LL、TT-TTなど)。

セルフタンデムモードの送受信伝搬経路はぴったり一致しませんが、送受信素子は同じフェーズドアレイプローブ上にあります。 最も単純な形では、伝搬経路(送信または受信経路)の1つのセグメントが試験体の底面部でスキップし、もう一方の伝搬経路(それぞれ受信または送信経路)が直進します。 両方の経路が交差する点に検出ゾーンが発生します。 パルスエコーモードと同様に、セルフタンデムモード(波形セット)は伝搬経路の各レグの音波モードによって定義されます(TT-T、TL-Tなど)。 セルフタンデム伝搬モードには、複数のスキップがある波形セットも含まれます(TTT-TTなど)。

超音波フェーズドアレイプローブを使用したトータルフォーカシングメソッドのパルスエコーモードとセルフタンデムモード

標準的なパルスエコー伝搬経路(左の3画像)とセルフタンデム伝搬経路(右の画像)

ピッチキャッチモードはセルフタンデムモードと同様の定義ですが、送受信素子が2つの異なるフェーズドアレイプローブ上にある点のみが異なります。

パルスエコーモードとセルフタンデムモードはTFM特有ではありません。従来型のフェーズドアレイやトータルフォーカシングメソッドでも使用できます。

パルスエコーTFMでは、試験体の厚さの変化は、底面エコーと内面に開口した欠陥表示の位置にのみ影響します。 パルスエコーTFMモードとは反対に、セルフタンデムTFMモードでは試験体の厚さのわずかな変化に非常に敏感です。送受信の焦点の重なり具合が少ないためです。 厚さのばらつきがわずか5%程度でも、セルフタンデムTFM検査の「焦点が合わない」可能性があるため、実際の対象物の厚さを正確に測定することが重要です。

Q:TFMモードで検査するときにウェッジを使用できますか。

A:もちろん可能です。 PAUTの場合と同様に、ウェッジの有無にかかわらずTFMでプローブを使用できます。

Q:TFMモードでは、Aスキャンは何から生成されますか。

A:TFMの「エンドビュー」の横に表示されるAスキャンは、FMCの基本Aスキャンデータセットからではなく、再構成されたTFM画像から生成されます。 TFM Aスキャンは、選択/表示されるピクセル振幅のマトリックスを表します。 TFMのAスキャンがPAUTで得られるような合計されたAスキャンではなく、合成Aスキャンと呼ばれるのはこのためです。

Q:TFMはフェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)より優れていますか。

A:トータルフォーカシングメソッドがPAUTよりも優れているかどうかは、用途やお客様の好みの問題でしょう。 リンゴを選ぶか、オレンジを選ぶかは好みの問題です。 アップルパイを作れるリンゴを選ぶ人もいれば、ジュースにできるオレンジを選ぶ人もいます。 PAUTとTFMの原理の違いを以下にまとめます。

  • 集束:従来型のPAUTでは、1か所の深さで集束するビームを生成します。 TFMはどこにでも集束するようになっています。 ただし、TFMはPAUTを実行可能にしているのと同じ音響原理に基づくため、同じ物理原則がPAUTとTFMに適用され、ビーム形成にもまったく同じ作用が働きます。 したがって、特にTFMについて見落とされることが多い事実として、この技法が近距離音場のみで作用することが挙げられます。 PAUTで焦点を当てた位置では、TFMとPAUTの性能は非常に似ているはずです。 PAUTは、集束しない場合も(スクリーニングの目的)集束する場合も(正確なサイジング)、高い柔軟性を持って作用します。
  • 検出:TFMとPAUTは、いずれも用途に応じて、他と同等以上の検出性能を提供します。 あらゆる位置に焦点を合わせるTFMの機能は、検出された欠陥の位置に応じた焦点の調整が不要で、内包物やポロシティなどのわずかな兆候を解像するのに役立ちます。 各種のTFMモードと波形セットは、さまざまな感度パターンを提示します。 なお、TFMは欠陥の方向に非常に敏感ですが、超音波探傷法であるがゆえです。 前述の各変数の影響を知らないままTFM検査を行うと、検出性能が低下する可能性があります。 良好な検出結果を得る最善の方法は、(超音波探傷器OmniScan X3のAIM機能などで)シミュレートされた感度マップを作成し、検証テストでシミュレーション結果を検証することです。 別の方法としては、長年、非破壊検査で使用されている技術に裏付けられたPAUT検出機能がよく知られています。 PAUTは、さまざまなタイプの亀裂や融合不良などの検出とサイジングに優れていますが、わずかな兆候(隔てられたポロシティなど)では効果が低いと認識されています。 上記の記述は「一般的に正しい」半面、ほとんどのPAUT検査が最初に焦点を絞らずに行われたことに原因があります(スクリーニング目的)。 適切な高品質のプローブとウェッジを組み合わせてPAUTをフォーカスモードで使用すると、TFMと同等の結果が得られます。 ただし、領域にビームの焦点が合っている場合に限ります。
  • スピード:FMCデータ収集では通常、各素子を連続的に処理します。PAUTは限られた数のビームセット(フォーカルロウ)を使用するため、一般に処理が高速になります。 さらに、TFMはリアルタイムの大量の演算処理を必要とするため、データ収集がさらに遅くなります。PAUT技法では必要ありません。 一般的に、PAUTはTFMよりデータ収集速度がかなり速いですが、集束点は単一の深さのみです。 また、TFMエンベロープを使用すると、標準TFMに対するデータ収集速度が速くなり、振幅忠実度値は受容可能なレベルのままです。
  • スキャンプランとシミュレーター:OmniScan X3探傷器には、AIM(Acoustic Influence Map)という便利なシミュレーションツールが装備されています。 各波形セットによって提供検査範囲が表示されるため、保存すべきFMCデータの選択に役立ちます。 TFMとPAUTはいずれも独自の方法で適切な検査範囲を確保するため、信頼できる結果を得るには、それらについて学ぶことが重要です(以下の「トレーニング」を参照)。
  • トレーニング:TFMとPAUTの両方を効果的に使用するには、適切なトレーニングが必要です。 各技法の推奨学習範囲と学習時間はほぼ同じです。 「誰でもTFMでボックスをセットアップできる」や「PAUTであらゆる角度から照射できる」などの誤った認識は、これらの技法に対する誤解の一因となります。 誤った判断につながる可能性を防ぐ唯一の方法として、適切なトレーニングが必要です。
  • 過去の事例や実例:PAUTは非破壊検査で20年以上使用されており、使用事例、能力、限界が確立されています。 代替方法としてのTFMは、業界がまだ十分に試していない幅広い可能性を提供する新しいテクノロジーです。
  • 現場での設定変更:TFMとPAUTは、いずれも現場で設定を変更することができます。
  • 校正:TFMとPAUTでは、いずれもターゲット範囲(ゾーン)全体で欠陥を確実に検出できるよう、適切な感度校正が必要です。
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