鉱物探査に役立つXRF
オリンパスのハンドヘルド(携帯型)蛍光X線(XRF)分析計は土壌や岩石、鉱石などにおける多元素の特性評価に必要となる高品位な地質化学データを、迅速にリアルタイムで提供します。近年におけるXRF技術の進展により、検出限界が大幅に改善されるとともに測定可能な元素種の数が増え、また、分析試験の所要時間も著しく短縮されました。ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAを鉱物探査と等級評価に活用すれば、土壌や掘削片、掘削コアサンプル中に含まれるニッケル(Ni)のリアルタイム分析が可能になります。あらかじめスクリーニングを行うことにより、掘削するターゲットの絞り込みや、ラボ分析に提出する優先サンプルの選択が迅速化され、効率的に掘削穴を決定することができます。 Ni、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)元素を測定し、それぞれの元素の存在比を算出することによって、そこが不毛な地区なのか、超苦鉄質岩の鉱化地区なのかを比較的短期間で判別できるようになります。また、これらの測定によって、特異なNi富化の可能性や、硫化ニッケル(NiS)鉱形成に好都合な火山活動の有無などの評価も可能になります。
等級管理のためのXRF
露天掘り、地下採掘を問わず、ハンドヘルドXRF分析計は世界中の鉱山で鉱石の等級モニタリングに利用されています。地下の岩盤表面を直接測定して予備的な指針が得られることや、サンプル調製すれば現場のNi鉱山ラボで使用できることなどから、特に破砕法で掘り進む鉱山でハンドヘルドXRF分析計による直接分析が使用されています。
図 2:土壌中のニッケルを表す等高線プロット(Pioneer Nickel社のFraser Range Project、西オーストラリア)。ハンドヘルドXRFによる測定結果(左)と、実験室での王水法による測定結果(右)
等級評価の迅速性が有益である鉱山では、備蓄されている粗鉱を最大限に利用するためにハンドヘルドXRFが使用されています。ここで採取されたデータをもとに、均一な調合を確実にし、選鉱場への安定した鉱石の供給が可能になります。ここに示すデータは、DELTA Premiumの性能を実証するために、OREAS 70シリーズの検定済み基準物質を測定した例です。粉体試料をXRFサンプルカップに充填して試験をしました。サンプルの測定時間はいずれも60秒です。図に示すように、ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTA Premiumによる測定結果は、検定値と非常に優れた相関関係を示しています。
ペナルティー元素と有害元素の測定
硫化ニッケル(NiS)鉱床には望ましくない元素が含まれることがありますが、ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAはそのような元素も正確に測定してくれます。ヒ素(As)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)などの元素が硫化ニッケル鉱床内に存在する場合、あらかじめそれらの元素を希釈しておかないと精錬炉ゲートで障害が発生します。また、マグネシウムに富んだ鉱物(滑石、繊維状蛇紋石など)は標準的な処理系統で問題を起こす可能性が高く、回収物の品位に大きな影響を与えるので、鉄:酸化マグネシウム比の高い鉱物の方が望ましいと言えます。
ヒ素など、これらの元素の何種類かを実験室で分析しようとするとフッ化水素酸の使用が避けられませんが、XRF分析計ならばこのような試薬の必要性が減少することも大きな利点です。その結果として、採鉱地における実験室での作業環境の安全性が向上します。
結論
ハンドヘルド蛍光X線(XRF)分析計DELTAを使用することにより、硫化ニッケル鉱山、採鉱地における実験室、ニッケル処理施設などにおける、硫化ニッケル(NiS)探鉱にかかわる様々なタイプのサンプルを迅速かつ簡便に測定することができます。