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渦流検査

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Tom Nelligan、Cynthia Calderwood著

磁気は、電気モーターや発電機、リレー、ステレオスピーカーなどの動作原理であるばかりでなく、非破壊検査ツールの重要なカテゴリーである渦流検査装置もこの原理にもとづく測定法です。渦流検査は薄板金属材料の安全性と品質に関わる検査を必要とする分野、具体的には航空宇宙産業を始めとする多くの製造・サービスの現場で広く使用されています。金属シートや管の割れ検出に加えて、航空機スキン(外層)の腐食確認のような金属肉厚測定、導電率を測定した熱処理効果のモニタリング、導電性基板表面をコーティングした非導電材の厚み測定などの用途に使用できます。 このように多種多様な検査ニーズに応えるため、現場で持ち運べるタイプと固定タイプの装置が開発されています。

渦流検査は広い検査領域を迅速に、接触媒質を必要とせずに測定することができます。割れ検出に加えて、金属の硬度や導電率が重要であるアプリケーションの検査に使用でき、さらに、金属部品の塗装のような非導電性の薄い膜の測定にも対応します。ただし、渦流検査の対象は導電性のある材料に限られるため、プラスチックに使用することはできません。場合によっては、渦流検査と超音波検査を相互補完的に組み合わせて使用することがあります(渦流は表面の迅速検査に適しており、超音波検査は浸透深さがより深いという特長があります)。


原理説明


渦流検査は電磁誘導と呼ばれる物理現象を利用する測定法です。渦流プローブの内部では、銅線を巻き付けたコイルに交流電流を流して振動磁界を作り出します。このプローブ(振動磁界)を金属製の試験片のような導電材に近づけると、水の流れの渦のように、金属内で電子が円を描いて流れ始めます。これを渦電流といいます。金属内で渦電流が発生すると、今度はその渦電流自体が磁界を作り出しますから、この渦電流磁界とコイル(コイルの作る磁界)との間の相互インダクタンスによる相互作用が起こります。金属の肉厚変化や、表面近傍に割れなどのきずが存在すると、渦電流が途切れたり、渦電流の振幅やパターンに変化が生じ、その結果として磁界が変動します。すると、このような磁界変動の影響を受けてコイルの電気的インピーダンスが変動するため、コイルを流れる電子の動きにも変化が生じます。このようなインピーダンス変化の振幅と位相角をプロットするのが渦流検査装置です。熟練したオペレーターならば、このような情報から試験片内で起こっている変化を見分けることができます。

渦電流の密度は部品の表面近傍で最も大きくなり、したがって、検査の分解能もこの領域で最大となります。渦電流密度が表面における値の37%まで低下する位置を標準浸透深さと定義しますが、この深さは検査周波数と、検査対象物の透磁率、導電率から計算することができます。検査対象物の導電率、透磁率、コイルを駆動するACパルス周波数、コイル形状などのすべてのパラメーターが検査の感度、分解能、浸透深さに影響を与えます。

多くの要因が渦流検査の能力に影響を与えます。材料の導電率が大きいほど、その中を移動する渦電流は表面欠陥に敏感に反応しますが、その一方で、浸透深さは浅くなります。また、浸透深さは検査周波数にも依存します。検査周波数を高くすると表面近傍での分解能は向上しますが、浸透深さが制約を受け、逆に周波数を低くするほど、渦電流が深くまで浸透します。ある特定の位置関係を考えるならば、コイルを大きくした方が材料中の探傷可能な体積が大きく(磁界がより深く浸透)なりますが、微細なきずの検出という観点から見ると、コイルを小さくした方がより敏感に反応します。また、材料の透磁率が変動するとノイズ(バックグラウンド変動)が大きくなるため、きずを検出する分解能が低下します。

導電率と透磁率は試験体自体の特性のため、オペレーターがコントロールできる要素ではありません。しかし、検査周波数、コイルのタイプとサイズは検査要件に合わせて選択することができます。ある検査を想定すると、分解能はプローブのタイプによって決まり、検出能力は材料と装置の特性の兼ね合いに依存して決まります。ある種の検査では、最良の結果を得るために複数の周波数を掃引するという手法が用いられます。また、起こり得るあらゆるきずの検出を必要とする検査では、きずの特性ごとに分解能と浸透深さの最適化を図るためにタイプの異なる複数のプローブを使用します。どの場合であっても重要なのは、アプリケーションに対して適正なプローブを選択して検査性能の最適化を図ることです。


インピーダンス・プレーン表示
従来型の渦流装置の中にはアナログメーターのみで結果を表示するタイプもありますが、現在ではインピーダンス・プレーン(コイル抵抗をX軸方向、誘導リアクタンスをY軸方向へプロットしたグラフ)が標準的な表示方法になっています。このプロットの変動が試験片の変動に対応します。たとえば、下の図に示すディスプレイは、アルミニウムの表面割れの検査を目的とした設定例です。一番上の曲線は0.040インチの深さを持つ表面割れを表し、中間の曲線は深さ0.020インチの割れ、一番短い曲線は深さ0.008インチの割れにそれぞれ対応しています。水平に描かれた線は、アルミ部品上でプローブのヌル調整(平衡化)を行ったときのリフトオフを表します。したがって、プローブを空気中へ持ち上げると、信号はこのライン上を左へ移動します。この検査例では、ペンシル型プローブを使用しました。

このディスプレイは、装置の校正状態を表していると考えることができます。パラメーターを一度設定したならば、検査の実行中にそのパラメーターを変更してはいけません。検査の測定結果は、基準となる校正と検査信号との比較に100%依存しているからです。

その他の一般的な検査の一つとして、金属表面上の非導電性コーティングの測定を挙げることができます。下の画面表示は、アルミニウム表面の非金属コーディングを示しています。このアプリケーションの場合、プローブを空中でヌル調整(平衡化)してからサンプルに接触させています。一番上のラインは、コーティングされていないアルミニウムだけの状態を示し、二番目から下のラインは、それぞれ0.004インチ、0.008インチ、0.012インチのコーティング厚に対応します。この例では、それぞれの信号が他から分離されて見えるようにするために、測定ごとに表示位置を変化させながら画像を作成していることに注意してください。校正が終了したら、実際に部品上で測定を行って、信号が画面を横切って走る距離を観察します。コーティングが過度に厚すぎたり、薄すぎたりしている場合、アラームで警報を出すことも可能です。

導電性のある材料上の非導電性コーティングの厚みを測定する別な方法として、オリンパスの渦流探傷器の導電率測定機能を使用することができます。この測定は専用の導電率プローブを用いて、上に示した標準的なインピーダンス画面とは異なる画面(下図)を表示します。この測定法は、通常、材料の導電率を測定するために使用されますが、コーティングの厚みを材料表面からのリフトオフ(導電性材料表面からプローブが浮き上がって離れている距離)と見なして、コーティングの厚み情報を取得することも可能です。図に示すのは、アルミニウム試験片上の0.004インチ厚コーティングを測定した例です。


渦流装置は非常に幅広い範囲の検査に適用できますが、どの検査に適しているかは使用するプローブに依存します。したがって、プローブを慎重に選択して検査性能の最適化を図る必要があります。一般的なプローブのタイプは次の通りです。

表面検査用プローブ - 金属表面とその表面下にあるきずの検出に使用します。通常、低周波数を使用して浸透深さを深くできるように、また、大きな探傷領域に対応できるようにするため、直径の大きなプローブが使用されます。

ペンシル型プローブ - 接触先端の直径が極めて小さいプローブです。表面近傍のきずの高分解能検出に適した高周波数コイルが組み込まれています。

ボルト穴用プローブ - ボルト穴内部の検査用に設計されたプローブです。このタイプのプローブは、手動で回転、または回転スキャナーを使用して自動的に回転させることができます。

ドーナツ型プローブ - 航空機用ファスナー(締結部材)穴を、ファスナーを取り付けたまま検査できるように設計されています。

スライド式プローブ
- 上記と同様に航空機用ファスナー穴の検査に使用されるプローブですが、ドーナツ型プローブよりもスキャン速度を速くして測定することができます。

IDプローブ - 熱交換器、それに類似した金属配管を内側から検査するために使用するプローブです。各種のサイズが用意されています。

ODプローブ - 金属配管/棒材を外側から検査するために使用するプローブです。試験片がコイルの中を移動するように設計されています。


対比試験片

渦流システム(渦流探傷器+プローブ)は、検査の実施前に必ず適切な対比試験片を使用して校正する必要があります。この校正作業では、所定の試験片からどのようなベースラインが発生するのかを確認し、実際に検査を実施する条件下においてそれがどのように変化するのかを明らかにする必要があります。きずの検出を目的とするアプリケーションの多くでは、まず、試験体と同じ材料、形状、寸法で、人工欠陥(切り込み、ドリル穴、切削痕)を作り込んだ対比試験片を使用して校正を行います。厚み測定を目的とするアプリケーションであれば、何段階かの既知の厚みを持つ試料を対比試験片として使用します。オペレーターは、あらかじめ対比試験片から得られる応答を観察しておき、それに続いて、試験体が示す指示値を対比試験片のパターンと比較して部品を分類します。このように、適正な対比試験片を用いて校正を行うことは、渦流検査における必須の重要なステップです。


一般的なアプリケーション例

渦流装置を使用する検査は非常に多岐にわたります。その中で、よく行われるアプリケーションを以下に説明します。

溶接検査 - 多くの溶接検査では、表面下を超音波で検査し、溶接キャップや熱処理の影響を受けた区域の、表面に露出した割れを検出するのに渦流検査を使用します。

導電率検査 - 渦流検査が導電率を測定する能力を持つことを利用して、鉄系合金と非鉄系合金の区別と分類、熱処理の結果の確認を行います。

表面検査
- 渦流検査を用いれば、機械加工部品や金属材料の表面割れを簡単に識別することができます。安全性に直接関わるアプリケーション、たとえば航空機ファスナー部材周りの検査なども、この手法の適用範囲に含まれます。

腐食検出 - 肉厚の小さな金属部材(たとえばアルミニウム製の航空機外層)の内部の腐食検出と進行度の定量的な把握にも渦流装置を使用することができます。金属の第二層や第三層の腐食を超音波で検出することはできませんが、低周波数の渦流プローブならば、このような腐食の位置を特定することができます。

ボルト穴の検査
- ボルト穴用プローブを使用すればボルト穴内部に存在する割れを検出することができます(多くの場合、自動回転スキャナーを併用します)。

配管検査 - 配管の製造過程におけるインライン検査ばかりでなく、熱交換器配管の現場検査なども渦流検査装置を用いてごく普通に行われています。割れまたは肉厚変動のどちらでも検出可能です。



渦流アレイ

渦流アレイ(ECA)検査は、同様のプローブ構成で並列に配置した複数の渦電流コイルを同時に使用する技術です。個々の渦電流コイルが検査対象物である構造物の位相と振幅に相対的に対応した信号を発生させます。こうして得られたデータを、エンコーダーからの位置信号と時間を参照しながら、C-スキャン画像として平面視で構造をグラフィック表示します。C-スキャン画像による視覚化に加えて、ECAはより広い探傷領域をシングルパスで、しかも分解能を劣化させることなく検査できるのが特長です。固定治具が単純であることもECAの利点です。 これにより、複雑な形状を持つ検査対象物であっても、その輪郭に合わせて作成したカスタムプローブで容易に検査することができます。


さらなる情報については下記を参照してください。

一般的な渦流検査チュートリアル(アイオワ州立大学発行):
http://www.olympus-ims.com/en/ndt-tutorials/eca-tutorial/

渦流アレイ検査チュートリアル(オリンパス発行):
http://www.olympus-ims.com/en/ndt-tutorials/eca-tutorial/

米国非破壊検査協会:「Nondestructive Testing Handbook」、Vol.5 「Electromagnetic Testing」(www.asnt.org から入手可能)

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