はじめに
シームレスパイプの製造工程では、パイプの軸方向にさまざまな角度で欠陥が生じます。 主に圧延や熱処理時に発生するこうした欠陥は、使用中にパイプの不具合の原因になる可能性があり、経済的および社会的に甚大な影響を及ぼす恐れがあります。
課題
製品の完全性を確保するため、シームレスパイプの製造業者は厳格な品質基準を維持する必要があります。 そのため、最も信頼性が高く精度の高い検査法が必要になります。 ただし、多くの従来型の自動フェーズドアレイ超音波検査(PAUT)パイプ探傷システムでは、製造工程で特定の角度で欠陥が発生すると想定されますが、いつもそうであるとは限りません。
現在のPAUT法で斜めキズを対象として検査するには、校正に使用する標準試験片に異なる角度で複数のノッチを設定し、それらのノッチを個々に校正する必要があります。
対処方法
オリンパスの回転式パイプ探傷システム(RTIS)で提供されるギャップレス探傷ソリューションは、全ての角度の斜めキズを個々の角度の基準ノッチを必要とせずに校正する事が可能です。 ギャップレス探傷ソリューションでは斜めキズ基準ノッチに対してひとつの角度のみ送信し、多数の受信角度で受信する事で対象領域を完全にカバーします。
設定パラメーターが変更されると、各受信チャンネルの校正ターゲットが自動的に更新されるため、校正シーケンスおよび表示される結果は、フェーズドアレイを使用した既存の個別の斜めキズ探傷と比較して変化しません。
結果
右の図で、正規化曲線(黒色の実線)は一定の校正レベルに設定されており、各受信チャンネルに必要なゲイン補正値が設定されています。 また、ノッチ曲線(実線)がRxチャンネル位置(赤色の点線)と交差する最大ポイントを使用して、校正ターゲットも表示されています。 | 標準試験片の校正ノッチに対する高分解能スキャン(正規化前) |
結論 / 主な利点
オリンパスのRTISが提供するギャップレスソリューションは、現行の校正方法と同じように実行が簡単で、中程度の習熟オペレーターでも実行できます。 体系立てられ、自動化された再現性の高いソリューションなのです。
オリンパスの実証済みのQuickScan LTハードウェアには、ギャップレス探傷を実行する機能が既に備わっているため、既存のシステムをこの新しいテクノロジーに簡単にアップグレード可能です。 また、特定の製造ロットに必要な厳密さと精度に応じて、ギャップレス機能を有効にするかどうかを選択することもできます。