ファイバーグラス製ボート船体の厚さ測定

背景: ボート業界では、作業船もプレジャーボートも、繊維強化プラスチック（FRP）製が主流となっています。 ボートメーカーも海事検定協会も、船体の厚さを正確に把握する必要があります。 以前は、マイクロメーターを利用できる環境でなければ、船体に穴を空ける以外に正確に厚さを測定することはできませんでした。 しかしながら、現在は超音波厚さ計を用いて船体の厚さを簡単に調べることができます。

超音波による厚さ測定は、ファイバーグラス製のマット/ロービングレイアップでは特に便利です。 レイヤーの厚さにはばらつきがあるため、定期的に厚さをチェックする必要があります。 船体は、バルサ材、コルク、フォームラバーなどの中核部を薄いファイバーグラスで挟むようにして作られている場合があります。 このような構造では、内部の材質が超音波を通さないため、船体の厚さを測定することができませんが、外側のファイバーグラスレイヤーの厚さは超音波で非常に効果的に測定できます。

機器: オリンパス製モデル38DL PLUSおよびHigh Penetrationソフトウェアオプション^と45MGおよびHigh Penetrationソフトウェア は、ファイバーグラスの厚さをデジタル測定できるポータブル厚さ計です。 これらは通常、厚いファイバーグラスや超音波を減衰させる種類のファイバーグラスへの超音波の浸透を最大限に高める、M2008探触子（500 KHz）と組み合わせて使用されます。これにより、ファイバーグラスの種類によりますが、約4～75mm （0.150～3インチ）の厚さ測定を可能にします。 特に測定が難しいケースでは、現場でのオペレーターによるセットアップパラメーターの調整が可能な、High Penetrationソフトウェアオプションと大画面波形ディスプレイを搭載した38DL PLUSが推奨されます この組み合わせなら、オペレーターが現場でパラメーターを調整できます。 M1036（2.25MHz）やM109（5MHz）などの探触子であれば、ファイバーグラスの厚さを最小0.050インチ（1.25mm）まで測定できます。

手順: HP（High Penetration）オプション搭載の38DL PLUSおよびHPオプション搭載の45MGゲージは、ファイバーグラスの厚さ測定で最も一般的な探触子であるM2008およびM1036に合わせたデフォルト設定が事前にプログラムされています。 多くの場合、このデフォルト設定のまま、すべての超音波厚さ測定で推奨される2点間音速およびゼロ点校正を行うだけで測定を実施できます。

ボートに使われるファイバーグラスは一般に品質が高く、他のファイバーグラス積層のように、誤った測定値の原因となる高振幅の内部反射が発生しません。 特定のケースにおいて誤った測定値が読み取られる場合でも、通常は、初期ゲインとTDGスロープを少し調整するだけで状況を改善できます（方法は厚さ計の操作マニュアルを参照してください）。 以下に示す38DL PLUSの波形は、内部反射による典型的な誤測定を示していますが、ゲインを少し調整することで、船体の厚さを正しく測定できるようになります。

内部反射での測定異常による誤った測定値の読み取り


ゲイン調整による読み取り値の修正

船体のファイバーグラスで層間剥離が起きた場合は、強力で明確な反射が現れ、底面エコーが完全に失われます。 超音波による剥離の検出は、EPOCHシリーズ^{などの専用の探傷器を用いて行うべきですが、熟練したオペレータであれば、}38DL PLUSや45MG といった厚さ計の波形表示から、船体内部で積層剥離が起きているかどうかの初期判断を行うことができます。

ゲルコート測定: 密接に関連した用途として、ファイバーグラスに塗布したスムーズゲルコート厚の測定があります。 ゲルコート厚の超音波測定の詳細については、アプリケーションノート「ファイバーグラスゲルコートの測定」を参照してください。