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ハンドヘルドXRFを使用した確実な自動車触媒コンバーターのリサイクル


2020年には、世界中で7800万台の自動車が製造されました。電気自動車(EV)の製造・販売が増加してはいるものの、今後数年はまだ多くの車に触媒コンバーター付き燃焼機関が搭載されることでしょう。

触媒コンバーターの構造

図1:触媒コンバーターの構造

この自動車部品には大量の原材料が必要です。特に、白金、パラジウム、ロジウムといった触媒コンバーター内部に使用される希少貴金属は、世界中で高い需要があります。これらには、未燃残留物(一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物)の酸化および中和を助ける働きがあります。使用中の自動車にもこれらの金属が必要です。通常、約100,000キロメートル(62,137マイル)を走行後の触媒コンバーターは、交換する必要があります。

しかし、これらの鉱石の採取には費用がかかり、環境汚染を伴います。ほんの1グラムの白金のために、約300 kg(661 lb)の鉱石を最大深度1,000メートル(3,281 ft)から採取しなければなりません。採取に労力と費用を費やしているにもかかわらず、アフリカ、ロシア、アメリカの大規模鉱山は、増え続ける需要になかなか追いつけません。

使用済み自動車触媒コンバーターのリサイクルは、それよりはるかに環境にやさしく、資源を保護します。スクラップを正しく分別して前処理すれば、使用済み触媒から白金、パラジウム、ロジウムを回収して、新たな触媒製造に再利用できます。

精度と透明性が信頼を生む

こうした有価金属の価格は、需要の変化、生産量、供給ボトルネックによって変動します。高価な金属を正しく識別し、価格設定するには、リサイクル工程全体で精度、スピード、透明性が求められます。

ザールブリュッケン(ドイツ)にある国際的なリサイクル企業Gebrüder Naim OHG社は、世界50か国の供給業者や顧客との関係を維持する中、正確な価格設定の価値を知っています。このリサイクル会社は2000年代初めからスクラップ卸売業が活況で、何年にもわたって触媒の購入、処理、販売に重点を置いています。300 kg(661 lb)~10トン(20,000 lb)の原材料が、世界中の供給業者から、ときには南アフリカやオーストリアからの船舶貨物で届きます。

受け入れた触媒

図2:受け入れた触媒

受け入れ材料の計量

図3:受け入れ材料の計量

取引先との良好な関係は、開示性、誠実さに加えて、価格契約のための正確で迅速な分析結果に基づいています。触媒スクラップの貴金属含有量を迅速にその場で確認することは、信頼の構築と不正の回避につながります。このリサイクル会社では、触媒試料に含まれるたくさんの化学元素を正確に判定するために、ハンドヘルド蛍光X線(XRF)分析計に頼っています。検査に使用するのは、当社のVanta™ハンドヘルドXRF分析計(VLWモデル)です。

貴金属含有量を確認するための迅速な元素分析結果

Vanta分析計は、稼働時間をより長く、所有コストをより低くするために、堅牢で防塵・防水性能があります。当社開発による革新的なAxon Technology™を備え、迅速で正確な再現性のある結果(検査間および機器間)が得られます。分析計のX線源からX線を照射し、試料から発せられた蛍光X線を測定することで、迅速な結果を提供します。30秒以内に最大25種類の試料内元素の量を判定します。

VantaハンドヘルドXRF分析計を使用した自動車触媒の分析例

図4:VantaハンドヘルドXRF分析計を使用した自動車触媒の分析例

白金、パラジウム、ロジウム以外に、分析計では触媒試料内のセリウム、タングステン、ニッケル、ルテニウムなどの元素を測定できます。鉛の量も測定できますが、これは鉛が原材料の重さ、つまり価格設定に影響する可能性があるためです。また、タンタルとセレンに特有のエネルギー線は白金のエネルギー線と重なることがあるため、これらの量も測定されます。これらの元素の存在を知らなければ、触媒スクラップに過剰な量の白金が含まれていると勘違いするおそれがあります。Vanta分析計は、インテリジェントなアルゴリズムによりこの問題を回避します。結果は驚くほど正確で、ラボの評価との一致度は99%です。

Vanta VLW分析計とVantaワークステーションを使用した触媒試料の分析

図5:Vanta VLW分析計とVantaワークステーションを使用した触媒試料の分析

触媒スクラップの分析と処理

供給された少量の触媒コンバーターは、非常に短時間で分析と完全な計算が可能です。触媒コンバーターは切断、プレスを経て、貴金属コーティングされた筐体(本体)内部にあるセラミックモノリス(中心部)に到達します。

触媒の取り出し

図6:触媒の取り出し

筐体スクラップは鉄鋼リサイクルに送られる一方で、価値のあるモノリスはボールミルで粉砕後、ふるいにかけて均一化し、乾燥、撹拌します。粉末試料を結合剤とともにプレスし、3つに分けます。

ボールミルで粉砕されるモノリス

図7:ボールミルで粉砕されるモノリス

試料採取

図8:試料採取

1つは管理用に供給業者に送られ、多くの場合はそこで所有のVanta分析計で検査されます。もう1つはリサイクル会社に残されます。残りの1つは予備試料となります。最後に、Vanta分析計を使用したハンドヘルドXRF分析が行われます。

より大規模な供給量の場合、試料は湿式化学分析のために外部ラボにも送られます。そこでは粉末を液体試料に変換し、各種の貴金属を読み取ることができます。この方法で得られる結果を精度で上回ることはできません。ただし、結果取得に1週間かかり、費用は個々に高額です。このように大規模な量の場合、社内分析に基づいて価格のかなりの割合を最初に支払い、外部ラボの結果が届いてから残りを支払うことがよくあります。この処理は「toll refining」として知られ、分析結果に基づいて支払いが行われます。

ラボでの触媒試料の分析

図9:ラボでの触媒試料の分析

供給業者による計算後、触媒コンバーターの粉砕された内部部品全体が、貴金属回収を行う世界各地の精錬業者に売却されます。

VantaハンドヘルドXRF分析計のおかげで、リサイクル企業は供給品の中身を即時に透明性をもって確認でき、両者にとって利益になる迅速で公正な価格契約に寄与します。この確実性が長期的な取引関係と収益性につながります。

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この用途に使用される製品

Vanta™ハンドヘルドXRF分析計は、自動車触媒コンバーター材料に含まれる白金族金属(PGM)のパラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)を、高速かつ正確に測定できます。現場で測定することで、リサイクルチェーン全体で触媒スクラップの効率的な選別と価格評価が可能になります。

VANTAシリーズは携帯性に優れたハンドヘルドタイプながら、素早く高精度な成分分析が可能で、質の高い分析結果を得ることができます。 IP55またはIP54相当の防塵・防水性能を備え、落下試験にも合格しているため、厳しい環境での分析業務にも対応することができます。

Vanta Element™ハンドヘルド蛍光X線(XRF)分析計シリーズは、高速性、堅牢性、接続性を、費用効果の高い2つのモデルで提供します。 Vanta Element分析計は手頃な価格で合金判定が可能です。Vanta Element-S分析計は軽元素の検出機能が搭載され、合金判定を手頃な価格で行うことができます。 材料および合金品種の判定を数秒で実行でき、スクラップリサイクルや金属製造用途の合金比較も簡単です。

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