アプリケーション
このアプリケーションノートでは、V150-V157およびV220-V222シリーズのような垂直入射横波探触子をご利用のお客様のために、重要な情報をまとめました。 このような探触子は多くの場合、超音波厚さ計、探傷子、または検査対象材料の横波速度を計測するためのパルサーレシーバーと一緒に使用され、アプリケーションノート「弾性率測定」に記載されている弾性率の計算に関係してよく用いられます。
背景
垂直入射横波探触子は、単一素子の接触探触子であり、屈折モードを変換することなく直接検査対象材料に横波を入射します。定義上、波動は検査表面に対して垂直に伝搬し、粒子は検査表面に対して平行移動します。探触子は電子の偏極方向に対して垂直に切られた圧電素子を使い、以下の概念図の通り、励起電圧が印加されてパルスが生成されている時は縦方向(圧縮)モードではなく横方向(横断)モードで振動します。
縦波素子 | 横波素子 |
その特性により、横波探触子の良い応答性を実現するためには、以下に記載した各要因に注目する必要があります。
(a)励起パルスの制限
横波探触子を使って検査を行う時、可能な限り最も低い励起電圧(100Vが好ましい)で終止駆動する必要があります。探触子に印加される電圧が高すぎる場合、時間が経過するにつれ、素子は実際に縦波素子に偏極されてしまいます。多くの超音波探傷器で使用される300~400Vパルスを長期的に用いた場合にこの結果が生じます。周波数がより高い素子(5MHz以上)は薄いため、このような偏極に最も陥りやすくなります。この効果を覆す方法はなく、いったん偏極されてしまった探触子は実質上、縦波探触子になってしまいます。
(b)カップリング
検査対象材料に垂直入射横波をカップリングするためには、SWC(U8770277)のような高粘度横波接触媒質(カプラント)を用いる必要があります。標準的な超音波接触媒質は液体やゲルであるため利用できません。液体の基本的特性として横波応力には対応できず、従来型の超音波接触媒質のような低/中粘度液体では横波を伝搬できません。最大の効果を得るためには、SWC高粘度接触媒質のとても薄い皮膜を、着実なカップリング圧力で用いることが重要です。推奨する作業手順は、探触子上に少量の接触媒質をのせ、カッターナイフの刃またはまっすぐな端で薄い膜に延ばし、検査対象材料にカップリングし、探触子を回転させることにより接触媒質をさらに絞り出すという手順です。接触媒質の層がだんだん薄くなるにつれ、エコー振幅の増加が大概観察されます。
(c)偏極方向
オリンパスの横波探触子における横波の公称偏極方向(粒子の動軸)は、標準的RMもしくはRBスタイルのケースの場合には垂直コネクターと同一方向になります。SBまたはSMコネクターの横波探触子は、偏極軸を記した線がケースに刻まれています。異方性材料を用いる際、検査対象材料の表面上で探触子を回転させると、パルス伝搬時間と振幅が変化することが多くなります。それにより、検査材料の方向的に変化する機械的特性に応じて、粒子の移動方向も変化します。
(d)材料減衰
横波伝搬は、よく使用されている工学金属やセラミックスにおいて、素粒状構造が存在しない限り優れています。しかし、ゴムや軟性プラスチックのように柔軟性のある材料の場合は、横波の減衰量が極めて高いので、正しい接触媒質が用いられた場合でも利用可能な横波エコーがないことがよくあります。アクリルのような硬性プラスチックや構造用複合材料は、超音波検査の周波数の低い領域においては、利用可能な横波を通常の場合伝搬してくれますが、その際に探触子の選定と機器の設定に注意を払う必要があります。
(e)縦波生成物
垂直入射横波素子は全て、内在する何らかの縦波エネルギーをも生成するものです。通常、この縦波成分は少なくとも横波信号より30dB低いものですが、横波減衰量が非常に高いのに縦波減衰量が低い材料(例えば軟性プラスチック)が用いられた場合、もしくは非粘性接触媒質が使用された場合は、横波成分が沢山減衰しながら縦波エネルギーがそのまま存在し、ディスプレイ上で一次波形として観察されてしまうことがあります。この現象は、上記(a)に記載されているように、励起電圧が非常に高いことにより横波探触子が損傷を受けた場合にも発生することがあります。
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