採掘作業では、鉱物抽出のための冶金プロセスをいくつか組み合わせて使用します。 これには、精鉱を生み出すための浮遊選鉱と、その後に最終製品を回収するための精錬または浸出が含まれます。 これらの各段階で定量鉱物学を活かすことは、貴重な鉱床を効果的かつ効率的に回収する上で重要です。 定量鉱物学によって、プロセス方式(混合など)がより効果的になり、継続的なプロセスの最適化が可能になります。 通常、冶金学者と地質学者は化学分析データを使用して定量鉱物学データの推定を行いますが、鉱物学特有の複雑さが原因となり、こうした推定が誤りを招く恐れがあります。 オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)では、冶金学者が現場で、取得に何日も何週間もかかけてやっと得ることができる信頼性のある定量鉱物学データをほぼリアルタイムで手にすることができます。
浮遊選鉱
浮遊選鉱とは、各種のベースメタル鉱石および貴金属鉱石の選鉱に使用される一般的なプロセスです。 浮遊選鉱では、鉱石を試薬(化学薬品)で処理し、有用な硫化鉱物を浮かせて非有用鉱物を沈めます。 残念なことに、硫化鉱物内に経済的な要素のすべてが含まれるという訳ではなく(例えば酸化物内に存在する場合もあります)、非有用脈石鉱物が浮き上がることもあり(タルクや粘土など)、選鉱品質の低下を招きます。
オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)システムを使用すると、冶金学者、地質学者、鉱山技師は以下のことが可能になります。
- 選鉱品質を低下させる、問題のある有害鉱物(タルクや粘土など)の定量化(図1)
- 浮き上がる経済的鉱物(硫化物など)の割合の定量化
- 選鉱くずのレオロジー測定(脱水、環境)
図1: オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)から取得した定量鉱物学的分析結果。
両方の試料における黄銅鉱の割合は似ていますが、試料1にはかなり多くの緑泥石が含まれています。
緑泥石は最終選鉱の品質を低下させ、浮遊選鉱回路に問題が発生する原因になるため、浮遊選鉱では厄介な存在です。 |
浸出
鉱石が含まれるすべての鉱物から金属を浸出することはできず、浸出可能な鉱石鉱物の浸出可能性 / 浸出率はそれぞれ異なります。 また、浸出プロセス時には脈石鉱物も酸を消費します。 オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)を使用すると、以下のことを効果的に行えます。
- 回収可能な金属の見積もり
- 値の最適化に最も適した浸出方法の選択(図2)
- 主要コストである酸の消費量の把握
図2: 異なる銅鉱石鉱物の浸出方法の結果。
鉱石鉱物の集合体を把握することにより、冶金学者は最適な浸出方法を用いることも、期待される回収量の現実的な見積もりを得ることもできます(Jansen
& Taylor 2003より引用)。 |
乾式冶金(精錬と焙焼)
濃縮物の鉱物組成は、精鉱製品の精錬や焙焼を含む後続の乾式冶金プロセスに大きい影響を及ぼします。 オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)から得られる定量鉱物学的データによって、冶金学者は以下のことが可能になります。
- 処理条件の最適化
- 精錬前の鉱石の追加処理または混合
- マットやスラグ(廃棄物)製品の分類
高速の定量鉱物学的分析 — 有用な冶金ツール
冶金プロセスの問題となる鉱物を定量化することは、問題のある鉱物を識別するよりはるかに重要になる場合があります。 問題のある脈石鉱物は、一定のしきい値(転換点。図3)以下の最小限または管理可能な悪影響をもたらします。 このため、冶金学者にとって正確な定量鉱物学データ(図4と5)をすぐに手に入れ、それに沿ってプロセスを最適化し、より適した混合方式を開発することが重要となります。
図3:
問題のある脈石鉱物を定量化することで、冶金学者は冶金プロセスの最善の管理方法を判断し、最適な混合方式を開発することが可能になります。 |
図4: ラボ用の4 kW X線回折装置(XRD)およびTERRA®ポータブルX線回折装置から得られた定量鉱物学的分析結果の高い相関関係。
分析された試料は銅山から採掘された鉱石です。 |
図5: さまざまな収集時間によるオリンパスX線回折装置(XRD)とラボ用の従来型4
kWX線回折装置(XRD)を使用して得られた、鉱物組成の比較。
オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)は、短い測定時間であるにもかかわらず、ラボ用装置との強い相関があることに注目してください。 |
オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)の利点
オリンパスの革新的なポータブルX線回折装置(pXRD)の利点は以下のとおりです。
- 少量の試料で測定: 必要な鉱物はわずか15 mg
- 試料の前処理が容易: 装置の操作とデータ収集に熟練技術者は不要
- 高速データ収集: 数分で測定結果を取得
- 携帯性: 可動部品のない堅牢設計
- 継続的なメンテナンスが不要: ダウンタイムを最小化し、離れた場所から定期的なX線回折を実行可能