マイクロ流路チップ(株式会社九州セミコンダクターKAW様ご提供)
アプリケーション - マイクロ流路の形状測定
マイクロ流路とは
分析や化学操作にマイクロスケール空間を利用することにより、高速反応が得られるとともに、貴重な試料の使用量や廃液処理量を大幅に減らすことができます。
マイクロ流路チップ(マイクロ流体デバイス)は、ミクロンオーダーの微小流路に液体を流し、抗体との反応や細胞分離・抽出から、溶液の混合、精製、検出といった様々な操作が可能です。
生体観察では、生体に影響の少ないPDMS(シリコーンゴムの一種)が材質として多く使用されます。
マイクロ流路チップの主な用途
マイクロ流路はさまざまな分野に活用できる技術であり、その応用範囲は多岐に渡ります。
- 医療分野:DNA検査、各種生体分析、診断機器、製薬開発 等
- 化学分野:有機合成、化学物質分析、液晶技術への応用 等
- 環境分野:水質や土壌モニタリング 等
- 食品分野:食品衛生管理 等
- 測定分野:分析機器への活用 等
マイクロ流路チップに対するユーザーのご要望と
株式会社九州セミコンダクターKAW様のソリューション
今回測定したマイクロ流路は株式会社九州セミコンダクターKAW様からサンプルをご提供いただいています。株式会社九州セミコンダクターKAW様はこれまでに培ってきた半導体の微細加工技術を活かし、マイクロ流路の製造にかかわるユーザーのご要望にお応えしています。
ユーザー要望1:希望するデザインの流路を高い精度で安価に製作してほしい
ソリューション
流路形成には多種多様で微細な形状が求められますが、半導体プロセスを用いたリソグラフィ技術により、他の加工方法で流路形成を行うことが難しい領域となるサブミクロンレベルの超微細なパターニングを施すことができ、ユーザーの目的に応じた流路設計が可能です。
モールド(鋳型)からの離型性や転写性が良い材料を選択していますので、高精細な流路形成品を得ることができます。
機械加工と比べて加工精度は極めて高く、成形品の金型製作と比べて初期費用は安価となり、短納期に対応できます。
ユーザー要望2:異種材料と接合させたい
ソリューション
ガラスだけでなく、プラスチックとの接合も可能です。例えば、医療・バイオ等で広く使用されているCOC,COP材との接合も可能で、PDMS製流路と様々な基材組み合わせが可能です。また、熱や加圧を必要としない表面改質による常温接合ができますので、熱による変形の心配はありません。
ユーザー要望3:マイクロ流路内壁に親水化処理を施したい
ソリューション
マイクロ流路に液体試料を毛管力で導入するには、流路内壁を親水化処理する必要があります。
一般的な手法として知られているプラズマ処理では、一時的に高い処理能力を誇るものの、時間経過とともに親水性が失われるという問題があるため、長期親水性の保持を目的とした表面処理を施すことが可能です。
また、流路内を選択的に疎水・親水化する要望での実績もあり、加えてタンパク質や細胞吸着抑制の表面処理もご要望に応じて可能です。
株式会社九州セミコンダクターKAW様 URL:http://www.kyushu-semi.co.jp/mems-technology.html
マイクロ流路形状測定におけるオリンパスからのソリューション
マイクロ流路はお客様の目的に応じてさまざまなパターンが製作され、その幅、高さはサブミクロンになることもあります。また、流す物質が適正なスピードで滞りなく流れるためにはマイクロ流路の内側の粗さがその物質にマッチしている必要があります。
流路形状と内側の粗さの高精度な測定は、マイクロ流路の重要な品質管理の項目としてユーザーのご要望があります。
オリンパス3D測定レーザー顕微鏡LEXTは高精度測定のご要望に以下のソリューションを提供いたします。
ソリューション1:LEXT専用対物レンズの持つ高分解能力で測定できます
オリンパスLEXTは光源である波長405nmレーザーに適応して、収差*を極限まで抑えた専用レンズを10倍から100倍までラインアップしました。これら専用対物レンズは平面分解能0.12umという高い分解能力に加え、レンズの中心部だけでなく、周辺部も正確に測定をすることができます。
*収差:理論上の顕微鏡像の結像と、光学系を通った実際の結像とのズレ
非専用レンズは収差の影響で周辺部が正確に測定できません。 | LEXT専用レンズは周辺部も正確に測定できます。 |
この専用対物レンズによって、マイクロ流路の微細な形状を高精度で測定でき、また、レンズの視野全域で測定を行う粗さ測定でも正確なデータを取得できます。
ソリューション2:4Kスキャンテクノロジーによって、急峻な形状データも測定できます
マイクロ流路は溝形状も多岐にわたっていて、ほぼ垂直形状であることも珍しくありません。
オリンパスLEXTでは新しいレーザースキャニング方式を採用する事により、急峻な形状でもデータを検出することができます。
他社製品では急斜面の形状を検出できません。 | LEXTでは検出することができます。 |
ソリューション3:非接触測定なので、サンプルの材質がデータに影響を及ぼしません
LEXTはレーザーでサンプル表面をスキャンする事でデータを取得します。したがって、サンプルが柔らかい材質であっても、サンプルにキズを付ける事によって、データが不正確になることがありません。プラスチックやシリコーンゴムなど柔らかい材質のマイクロ流路も正確なデータを取得することが可能です。
レーザーによるスキャニングイメージ図
例えば接触式粗さ測定器では、柔らかい材質や粘着性のあるサンプルは表面にキズをつけてしまい、正しいデータが取得できません。LEXTではこのような問題は発生しません。
測定事例1:断面プロファイルによる3D計測
スクエアな形状のマイクロ流路を測定した事例です。ほぼ垂直な流路の形状を捉え、任意の位置の断面プロファイルで幅囲、高さのデータを計測しています。
測定事例2:流路底面部の粗さ計測(機械加工製品との比較)
PDMS製マイクロ流路の溝底部の粗さ測定事例です。任意のエリアの粗さを計測できます。Sa値0.007umと非常に滑らかな面であることがわかります。
下記は機械加工によるプラスチック製マイクロ流路の溝底部の粗さ測定事例です。
Sa値が0.34umと、フォトリソ加工に比べると滑らかさが劣ります。
また、LEXTによるレーザー画像では上記のような機械加工の跡が確認できます。この形状はスムーズな液体の流れを妨げる原因となる可能性があります。