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金属・合金における粒度解析


背景

金属部品の製造工程における品質管理では、鉄やアルミなどの純金属や合金に含まれる結晶粒の評価が重要です。一般に、金属は結晶構造を持っており、「粒界」と呼ばれる結晶粒の境界線があります。金属や合金が処理されるとき、成長する各結晶粒中の原子が、その構造に応じて特定のパターンに並び、粒界を形成します。金属の機械的特性は、粒径が小さいほど向上することが明らかになっています。したがって、金属の組成や処理を慎重に管理し、粒径を調整する必要があります。

品質を評価するには、金属組織のサンプルを用意し、通常は顕微鏡で結晶粒を解析して、粒度と結晶粒の分布を調べます。例えば、人命に関わる自動車産業では、特定の金属中の粒度と結晶粒の分布を調べて、新たに設計した自動車部品が厳しい環境に耐えるかどうかを判断します。航空機部品メーカーでは、商用航空機の着陸装置に使用されるアルミニウム部品の結晶粒特性を厳格に見極める必要があります。このような粒度や結晶粒の分布傾向の解析に加え、厳密な社内品質管理ルールに従って、解析結果を詳細に文書化し、将来いつでも引き出せるように保管する必要があります。

鋼中の結晶粒(倍率:100倍)

鋼中の結晶粒(倍率:100倍)

課題

結晶粒の解析に関してはさまざまな規格がありますが、北米や南米ではASTM E112が主要な規格となっています。従来より、大半の品質管理では結晶粒の解析を比較法で行っています。比較法では、オペレーターが顕微鏡での目視画像と標準図(顕微鏡付近の壁に貼られていることが多い)を比較して、粒度を視覚的に推定します。

目視画像との比較に使用される顕微鏡の接眼レンズ用レチクルの例
目視画像との比較に使用される顕微鏡の接眼レンズ用レチクルの例

あるいは、標準図と比較する代わりに、粒度のパターン画像が挿入された接眼レンズ用レチクルを顕微鏡の光路に直接挿入する場合もあります。これにより、オペレーターは評価するサンプルと標準図を同時に見て、顕微鏡内で直接比較できます。

粒度はオペレーターによって推定されるため、再現性が低く、推定するオペレーターが異なると結果にもばらつきが発生してしまいます。また、パソコンでレポートを作成するときにワークシートなどに結果を手入力する必要があるため、入力ミスが生じる可能性もあります。

このように、金属組織の品質管理における課題は、手作業のミスを排除し、客観性を保ち、ASTM E112などの規格に準拠した結晶粒の解析を簡単に行える方法を見つけることです。また、データ保管やレポート作成を効率的に行い、時間と経費を節約する必要もあります。

ソリューション

ここでは、金属の品質管理におけるデジタル化について紹介します。工業用顕微鏡に特化したソフトウェアを使用すると、画像解析を活用して結晶粒の解析を行い、ASTM E112をはじめとするさまざまな規格に対応できます。

画像解析で広く使われている方法の一つに「切断法」があります。この方法では、デジタル画像(ライブ画像または取り込み画像)の上に試験線(円、十字線と円、直線など)が重ねられ、この試験線と粒界の交点が画像上に記録されます。画像解析ソフトウェアでは、ASTMなどで規定される粒度番号Gと平均線分長を、交点の数と試験線の長さの計算式から自動的に求めることができます。

粒度解析(切断法)
粒度解析(切断法)

粒度解析(計数法)
粒度解析(計数法)


また、「計数法」もよく使用されています。切断法とは異なり、計数法では単位面積当たりの粒子数を計算して画像上(ライブ画像または取り込み画像)の粒度を決定します。

結果は画像解析ソフトウェアで自動算出されるため、人による推定が不要となり、精度と再現性が全般的に改善されます。さらに、解析結果を自動的にワークシートやLAN上のサーバーに保管するように設定することもできます。

ASTM E112での解析結果
ASTM E112での解析結果

関連するデータや画像を含むレポートは、簡単な操作で作成することができます。

顕微鏡システム構成

以下では、デジタル画像解析による結晶粒の解析を行うための一般的な顕微鏡システム構成を紹介します。

倒立金属顕微鏡:
研磨された平らなサンプルはXYステージに置くとピント合わせがしやすく、正立顕微鏡よりも倒立顕微鏡の方が適しています。

工業用の画像解析ソフトウェア:
画像解析ソフトウェアでは、ASTM E112をはじめとするさまざまな規格に準拠し、結晶粒を簡単に解析できるオプションが用意されています。購入前に、切断法と計数法のどちらかを選択する必要があります。

一般的な顕微鏡システム構成:倒立金属顕微鏡、金属用対物レンズ(倍率:10 倍)、顕微鏡用高解像デジタルカメラ
一般的な顕微鏡システム構成:倒立金属顕微鏡、金属用対物レンズ(倍率:10 倍)、顕微鏡用高解像デジタルカメラ

金属用対物レンズ(倍率:10 倍):結晶粒の解析に必要な倍率の対物レンズです。

顕微鏡用高解像デジタルカメラ: 結晶粒の解析用のデジタルカメラを検討する場合、補間分解能よりも画素サイズ(または画素密度)の方が重要です。サンプリングやデジタル処理での再現に必要な画素数を算出する場合「ナイキスト定理」がよく参照されていますが、この定理では、細部を再現する最小単位(または光学解像度)をサンプリングするには2~3画素が必要とされています。結晶粒の解析は10倍の対物レンズ(10倍の接眼レンズと組み合わせて、総合倍率は100倍)で行う場合が多く、その場合、通常の中程度の対物レンズの光学的解像度は約1.1μmになります。そのため、画素サイズは366nmより小さい必要があります(最小単位あたり3画素必要とした場合)。例えば、画素サイズが3.45μmの5 百万画素のカメラの場合、画素サイズは345nmとなります(1倍のカメラアダプターを使用する場合。画素サイズを10倍の対物レンズで割ります)。光学解像度(1.1μm)を画素サイズ(345nm)で割ると、3.2となります。この例では、識別可能な最小単位をサンプリングするには3.2画素が必要で、最小単位ごとに2~3画素必要というナイキスト定理の基準を満たしています。これは少し複雑な考え方ですが、大まかに言うと、結晶粒の解析には、画素サイズを考慮して、3百万画素以上の工業顕微鏡用デジタルカメラを推奨します。

しきい値の設定がカラーモードより簡単なため、結晶粒の解析にはグレースケールモードが使用できるカメラをお勧めします。また、ライブモードでのリフレッシュレートが高いカメラを選ぶと、サンプルのピント合わせや位置決めが楽になります。

また、画像解析ソフトウェアが対物レンズの倍率を常に自動的に読み取れるコードレボルバまたは電動レボルバの使用を推奨します。これにより、対物レンズの倍率を設定する際に、手作業による誤入力が無くなります。

サンプルの解析対象領域の位置決めを行うには、手動または電動のXYステージが必要です。

デジタルカメラと画像解析ソフトウェアの動作環境を満たすパソコンと高解像度モニターが必要です。

手順

  1. 10倍の対物レンズを選択し、落射照明の明視野観察の状態でXYステージ上のサンプルを移動させ、解析対象領域を表示します。
  2. 画像解析ソフトウェアを使用して、デジタル画像を取得します。注:画像解析ソフトウェアでは、取得した画像の解析のほかに、ライブ画像の解析も可能です。
  3. 必要であれば、画像解析ソフトウェアで、画像フィルターを適用し、なるべく粒界切片がはっきりと表示されるようにします。画像解析ソフトウェアではプレビュー画面が表示されるため、フィルターの効果を簡単に確認することができます。
  4. 画像は選択された規格に従って解析されます。結果のデータは、ワークシートに出力されます。
  5. 結晶粒の解析では、一つのサンプルに対して5箇所の解析が必要となる場合があります。そのような場合は、手順1~4を5 回繰り返します。
  6. あらかじめ設定したテンプレートに基づいて、解析結果、結晶粒の画像、関連データを含むレポートが自動的に作成されます。

まとめ

以前はオペレーターが目視で粒度番号Gを評価していましたが、工業顕微鏡用の画像解析ソフトウェアを使用すると、粒度を正確にかつ繰り返し算出できるため、オペレーターの作業を効率化することができます。画像解析ソフトウェアはASTM E112をはじめとするさまざまな工業規格に準拠しており、簡単に導入できます。また、解析だけでなく、解析結果に基づいてレポートを自動作成したり、画像や関連データを保存したり素早く簡単に検索することもできます。オリンパスでは、結晶粒の解析を迅速かつ正確に行うソリューションを提供しています。工業用顕微鏡メーカーとしてこれまでに培った経験に基づいて、機器の選定から導入に至るまでサポートいたします。

参考文献

Carmo Pelliciari, Dr. Eng., Metallurgical Consultant

American Society for Testing and Materials (ASTM) E112-88 Standard
ASTM International, 100 Barr Harbor Drive, PO Box C700,
West Conshohocken, PA, 19428-2959 USA

"Committee E-4 and Grain Size Measurements: 75 years of progress."
ASTM Standardization News, May, 1991, George Vander Voort

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