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スキー板のエッジ測定


スキーエッジスキー板のエッジ測定

概要

スポーツ世界において、競技で再考の結果を出すためには、用具を適切に調整することが重要です。スキーやスノーボードの世界では、板のエッジの鋭さが成績に大きく影響します。トップレベルの競技では、ゴールタイムは僅差であり、あらゆる要因が結果を左右するため、エッジ研磨の精度はより一層重要になります。ウスター工芸研究所スポーツ工学実験室(Worcester Polytechnic Institute Sports Engineering Lab)は、エッジ研磨の精度を高め、様々な滑走条件に対するスキーエッジの抵抗を測定するため、スキーエッジの精密な3D撮影および測定が可能となるように、新しい測定装置を設計・試作しました。

この装置の目的は、スキーおよびスノーボードの板のエッジを機能的および幾何学的な2つの方法で測定することです。測定データを分析した結果、エッジの形状が性能にどのように関係するかを把握することが出来ました。この測定は、エッジとその研ぎ方の評価に利用可能で、競技にとって重要であるばかりでなく、スキー板の製造や一般的なメンテナンスにとっても重要になっています。

測定方法

スキー板のエッジの鋭さを評価する既存の方法はいくつかありますが、いずれも定性的かつ主観的で、職人的な感覚に依存するものです。新しい測定装置では、エッジの鋭さを客観的に測定します。まず、氷または雪を模した材料をエッジに対して一定の角度で配置します。そこに荷重を加えていき、エッジに対して直角または平行に動かすのに必要な荷重を測定します(図1)。エッジの幾何学的な形状が測定され、エッジの曲率がエッジ全体に対する比率と位置の関数として計算されます。さらに、性能対曲率の一次回帰分析により、相関係数が比率の関数として求められます。スキーエッジの測定には、レーザー顕微鏡(オリンパスのLEXT OLS4100)が使用されます。曲率はヘロンの公式(Gleason at al. 2013)1を用いて計算されます。

性能測定値の基本原理

WPIスポーツ工学実験室は、用具メーカーやスキー施設、競技者、指導者にスキーやスノーボードのエッジを高い精度で測定する手段を提供するために、このエッジ測定装置を製作しました。この装置によって、エッジに沿った滑りだけでなくエッジに直角な横滑りに対する抵抗力も測定できるようになりました。また、OLS4100により、スキーエッジの3D形状測定が可能となり、ダイレクト測定とエッジ曲率の特性解析も可能となりました。

図1 基本原理

図1 装置による性能測定の基本原理

垂直抗力に対する接線力の比T/N

  • 鋭さの測定値
  • 摩擦係数(µ=T/N)と類似

同様に、エッジの接線方向に作用させると、エッジの鋭さがスキーエッジの滑り抵抗に及ぼす影響を測定することができます。

エッジの適切な粗さの重要性

スキーまたはスノーボードのエッジの鋭さが、性能に大きく影響します。エッジが鈍すぎると、スキーコントロールに問題が生じます。米国北東部の滑走面に見られる、硬く氷結した状態の場合、エッジの鈍さはスキーコントロールにおいてさらに大きな問題となります。厳しい競技の世界では、スキーを鋭角に置いて高速で切り込めるように、エッジはより一層鋭く研がれます。同時に考えなければならないことは、極めて鋭く研がれたエッジは怪我の元になるため、使用および取り扱いの両方において適切な注意が必要だということです。

スキー滑走と機械加工の比較

図2 非常に鋭く研がれたスキーエッジ

図2 スキッディング 鋭く研がれたスキーエッジにより可能

スキーエッジの粗さとその滑走性能との関係を考えるとき、スキーと雪の関係を機械加工と対比させることができます。スキッディング(スキーが非常に大きな角度で雪面に切り込む状態[図2])は切削と似ており、スキーは工具に、雪は加工対象物に相当します。スキーの回転力は工具の切削力に等しく、スキーのエッジ角度(スキッディング時は90°超)は工具のすくい角に相当します。スキーエッジの鋭さは、工具の鋭利さと同様に、スキッディング/カービング(切削)の際にスキーが雪に対してどのくらいのエッジ角(すくい角)まで持ちこたえられるかを決める要因です。

Sスキーエッジの曲率

クリストファー・ブラウン博士率いるWPIスポーツ工学実験室の測定の専門家チームは、新しい測定装置の開発において、スキーエッジの曲率を観察する新たな方法を生み出すことから着手しました。そして、新たな方法により、彼らはスキーエッジの粗さを観察・解析する極めて精密な手段を手に入れました。ブラウン博士のチームは、スキーエッジの最適な観察ができるよう設計された装置(図3)とレーザー顕微鏡装置(オリンパスLEXT OLS4100[図4])を組み合せて、スキーエッジの曲率を正確に測定することによってスキーエッジの鋭さを測定する新しい方法の開発に成功しました。

図3 試作装置
図3 WPI製造実験室の試作機 鋭いエッジ形状により、スキーエッジに対して垂直方向の抵抗を試験する。荷重枠を回転させて、スキーエッジに対して平行方向の抵抗を試験できる。
図4 レーザー顕微鏡OLS4100
図4 オリンパスのレーザー顕微鏡LEXT OLS4100

粗さの画像化と解析

この新しいスキーエッジ測定装置によって、スキーエッジの曲率の3D形状画像を撮影し、解析を行うことが可能となります。この装置の有効性を示すため、WIPスポーツ工学実験室では、次に示すさまざまな条件で研磨したスキーエッジの画像を撮影・解析しました。用語は標準的なスキーエッジの用語に基づいています(図5)。

図5 スキーエッジのモデル
図5 この図は、標準的なスキーエッジの基本レイアウトおよび用語を示しています。
図6 研磨していないスキーエッジのグラフ
図6 研磨していないスキーエッジのグラフ

やすりで研いだスキーエッジのグラフ

同じスキーエッジをやすりで研いだ後の状態です。異なる研磨用具による表面粗さの比較のため、研磨は(ベースエッジとサイドエッジを切り替えて)交互に行いました。

きめの粗いダイアモンド砥石で研いだスキーエッジのグラフ

同じスキーエッジを粗いダイアモンド砥石でさらに研いだ後の状態です。エッジ研磨の方法を変更したことにより、研磨後エッジ先端のバリの方向が変化したことが分かります。

ベースエッジとサイドエッジを研いだスキーエッジのグラフ

一般的に、プロのスキーヤーは上述のように交互には研ぎません。まずベースエッジを完全に研ぎ、その後サイドエッジを研ぎます。こうすることにより、バリはベースエッジと平行な方向ではなく、サイドエッジと平行な方向を向きます。上の図は、標準的な方法を用いて、やすりだけで研いだスキーエッジを示しています。明らかにスキーエッジ表面に乱れがあり、エッジにも不規則なバリが見られます。

セラミック砥石で研いだスキーエッジのグラフ

先に見たスキーエッジを、セラミック砥石を用いて標準の研ぎ方でさらに研いだ後の状態です。この追加の研磨作業により、エッジ表面がかなり滑らかになり、不規則なバリも少なくなりました。

結論

これらの3D形状画像を元に、ブラウン博士のチームは、ここで注目しているスキーエッジの研磨技術に関して以下の結論に達しました。

  • 研磨方法によりスキーエッジ先端のバリの方向が決まる。
  • このバリは、スキーヤーにとって、回転時は牽引力となるため有利だが、直進時は摩擦力となり速度を低下させるため不利になる。
  • やすりだけで研がれたスキーは、研いでいないスキーより滑らかである。
  • 砥石で研がれたスキーは、やすりで研いだスキーよりさらに滑らかである。
  • 始めに標準やすりで研いだ後専用砥石に移る方法では、スキーエッジの表面粗さは大幅に低減し、スキーヤーはより滑らかに滑走することができる。

まとめ

この新しい測定装置で可能になった曲率の画像化とエッジ測定のレベルは、レーザー顕微鏡による3D形状観察により実現しました。これにより、位置と比率に対する曲率の計算が可能となり、この新しい計算法を使用できるのは、特許出願中のこの装置だけです。曲率が倍率と位置によって変化するため、これまで曲率の特性解析は難しい技術でしたが、WPIスポーツ工学実験室は、今回のスキーエッジ測定装置の開発を経て、現在は、複数倍率で位置固有の曲率特性を解析する方法の開発に取り組んでいます。この新しい装置は、エッジに対して直角方向への横滑りおよびエッジに沿った滑りの両方に対するスキーエッジの抵抗が測定できるように設計されており、すでに試作が完了し、仮特許出願済みです。

1Gleason, M. A., Kordell, S., Lemoine, A., Brown, C. A. (2013) Profile curvatures by Heron’s formula as a function of scale and position on an edge rounded by mass finishing. 14th International Conference on Metrology and Properties of Engineering Surfaces, Taiwan 17-21 June 2013.

Olympus IMS

この用途に使用される製品

LEXT OLS5100は、非接触・非破壊で微細な3D形状の観察・測定が可能なレーザー顕微鏡です。 サブミクロンオーダーの微細な形状測定に優れ、スタートボタンを押すだけでオペレーターの習熟度に左右されない測定結果を得ることができます。 また、新開発の『実験トータルアシスト』により、実験計画作成からデータ取得・解析、分析・データ出力までを一括管理することで、人為的なミスを低減し、手戻りを防ぎます。ISO/IEC 17025認定校正に対応しています。

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