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精密超音波厚さ計測の理論と応用

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著者:Kenneth A. Fowler、Gerry M. Elfbaum、Thomas J. Nelligan

超音波非破壊検査(NDT)(高周波数音波を使用して、材料の厚さ、完全性などの物理特性を評価する方法)は、製品試験および品質管理に幅広く使用されている技法です。 厚さ計測用途では、超音波技法によって、部品の両面に触れることなく、迅速で信頼性の高い厚さ計測が可能です。 用途によっては、±2μm(±0.0001インチ)の高い校正後精度が達成可能です。 金属、プラスチック、セラミックス、複合材料、エポキシ、ガラスなどほとんどの工学材料は、超音波で測定できます。液位や特定の生物試料の厚さも測定可能です。 押出成形プラスチックまたは圧延金属におけるオンライン測定や工程内測定は、多層材料の基板上にある個別の層やコーティングの測定であるため、多くの場合実施可能です。 最新のハンドヘルドデジタル測定器は、使い方が簡単で、高い信頼性を持ちます。

市販の超音波厚さ計は、一般に腐食厚さ計と精密厚さ計の2種類に分類されます。 腐食厚さ計は、外側から見えない内部腐食が発生しやすい金属パイプ、タンク、構造部品、圧力容器の残り肉厚を測定するために特別に設計されたものです。 腐食した粗い試験片の最小残り肉厚を検出するように最適化された信号処理技法が採用されており、この目的に特化した二振動子型探触子が使用されます。 腐食厚さ計は、本稿で扱う内容の範囲外です。 ご説明する精密厚さ計は、一振動子型探触子を使用し、他のすべての用途(滑らかな金属も含む)に推奨されるものです。 さまざまな種類の探触子が入手可能ですが、精密厚さ計は極めて用途が広く、腐食厚さ計よりも高い精度で測定を行えます。

1. 測定原理

精密超音波厚さ計は、通常、電気パルスによって励起されると一気に音波を生成し、受信モードでは音波を電気バルスへと逆変換する広帯域の減衰圧電探触子を使用して、500KHz~20MHzの周波数で動作します。 多様な工業用途のニーズを満たすために、さまざまな音響特性を持つ幅広い探触子が開発されています。 厚い材料や減衰率の高い材料、散乱の多い材料を測定する場合には、通常は、浸透性を大きくするために低い周波数が使用され、薄い材料、減衰や散乱のない材料では、分解能を高めるために高い周波数が推奨されます。 広帯域設計は通常、精密厚さ計測用途で、表面近くの分解能を可能な限り高くするために使用されます。

パルスエコー超音波厚さ計は、探触子によって生成された短い超音波パルスが材料の厚さを伝播し、背面または表面内で反射されて探触子に戻ってくるまでに要する時間を正確に測定することにより、部品や構造の厚さを決定します。 この時間間隔は、ほとんどの用途で、わずか数マイクロ秒以下です。 行って帰ってきた経路を考慮して、測定した往復伝播時間を2で割ってから、試験材料の音速を掛けます。 結果は、よく知られた次の関係で表されます。

d = Vt/2
ここで、d = 試験片の厚さ
V = 材料内での音波の速度
t = 往復伝播時間の測定値

また、実際の測定では、固定して発生する電子的な遅延および機械的な遅延を考慮するため、通常は時間間隔の測定値からゼロ点調整を引きます。 直接接触型探触子を使用する測定では一般的に、ゼロ点調整によって、探触子の当板と接触媒質層を音波パルスが伝播する時間、および電子的な切り替え時間やケーブル遅延が補正されます。 このゼロ点調整は、機器の校正手順の一部として設定され、最も高い精度と直線性を得るために必要なものです。

図1:一般的な測定器のブロック図
図1:一般的な測定器のブロック図

図1は、一般的な超音波厚さ計のブロック図です。 マイクロプロセッサーの制御下にあるパルサーは、広帯域スパイクまたは調整された矩形波電圧インパルスを探触子に提供し、送出超音波を生成します。 試験片から送り返されたエコーを探触子が受信し変換して電気信号に戻します。電気信号が受信増幅器に送られて、デジタル化されます。 マイクロプロセッサーによる制御とタイミングロジックの両方がパルサーと同期し、適切なエコーを選択します。そのエコーが、時間間隔の測定に使用されます。 自動ゲイン制御が、エコーの振幅を標準化するのによく使用されます。

エコーが検出されると、タイミング回路が、本稿の次の節で説明するモードの1つで時間間隔を正確に測定します。通常はこの処理を何度か繰り返して平均値を求めます。 次に、マイクロプロセッサーがプログラムされた音速およびゼロ点調整の値と一緒に時間間隔の測定値を使用して、厚さを計算します。 最後に、厚さが表示され、選択した頻度で更新されます。

多くの測定器は、内蔵データロガーが組み込まれており、何千個の厚さ計測値を識別コードおよびセットアップ情報と一緒にメモリーに保存することができます。 この保存された値は、測定器のディスプレイに呼び出したり、プリンターやコンピューターにアップロードして、さらなる解析やアーカイブ化を行ったりすることができます。

2. 精密計測用の測定モードと探触子の選択

厚さの超音波測定を行う方法は、測定の実施に使用する探触子の種類に応じて分類でき、超音波パルスの試験片内における伝播時間の決定に使用するエコーの選択によって分類することもできます。 測定方法を探触子の種類で分類する場合、精密厚さ計測で使用される基本分類には次の3つがあります。

1. 直接接触型探触子:直接接触型探触子は、名前からわかるように、試験片に直接接触させて使用します。 薄くて硬い当板が、通常の使用で発生する損傷からアクティブな振動子を保護します。 直接接触型探触子を使用した測定は、多くの場合、非常に簡単に実装できる方法で、腐食測定以外のほとんどの一般的な厚さ計測用途で常に第一選択肢となります。

2. 遅延材付き探触子:遅延材付き探触子では、アクティブな振動子と試験片の間に、プラスチック、エポキシ、石英ガラスのいずれかでできたシリンダー(遅延材と呼ばれます)が設置されます。 主な用途は、底面エコーから励起パルスの回復を分離することが重要になる薄い材料の測定です。 遅延材を断熱材として使用して、熱に弱い探触子振動子を、熱い試験片との直接接触から保護することもできます。遅延材は、鋭い曲面や狭い空間での音響結合がよくなるように、形状や輪郭を調整することもできます。

3. 水浸型探触子:水浸型探触子は、カラムや水槽を使用して音波エネルギーを試験片に音響結合させます。 水浸型探触子は、可動製品におけるオンライン測定や工程内測定、スキャン測定に使用できます。曲率半径の小さな曲面、溝、チャンネルに対する音響結合を最適化する際にも使用できます。

伝播時間の測定に使用するエコーの選択によって測定技法を分類する場合も、以下の3つの基本分類(モード)があります。

モード1:モード1では、直接接触型探触子を使用して、励起パルスが発生してから、試験片からの最初の底面エコーが発生するまでの間に測定が行われます。 これは汎用的な試験モードで、モード2またはモード3で説明する状況に該当しない場合に、通常は使用を推奨されます。

モード2:モード2では、遅延材付き探触子または水浸型探触子を使用して、試験片の表面近くを表す境界面エコーが発生してから、最初の底面エコーが発生するまでの間に測定が行われます。 プラスチックでは、モード2の方がモード1より最小厚の分解能が高くなります。 遅延材付き探触子または水浸型探触子を使用した曲率半径の小さな凸面または凹面、狭い空間における測定、水浸型探触子を使用した可動材料のオンライン測定、高温測定にも使用されます。

モード3:モード3では、遅延材付き探触子または水浸型探触子を使用して、連続する2つの底面エコーの間に測定が行われます。 モード3は、複数のクリーンな底面エコーが現れる場合にのみ採用されます。このモードの使用は通常、微粒金属、ガラス、セラミックスなどの比較的減衰が小さく音響インピーダンスが高い材料に限られます。 モード3は、特定の用途で最も高い測定精度を実現し、最高の最小厚さ分解能が得られますが、それと引き換えに浸透性は悪くなります。一般的には、精度の要件または分解能の要件あるいはその両方の要件が、モード1でもモード2でも満たされない場合に使用されます。

以上の分類を図2にまとめ、3つのモードのタイミングと、それぞれに使用できる探触子の種類を略図で示します。

図2

*厚さの範囲は約5.9mm/µSまたは.23in/µSの音速を想定しており、最大範囲が材料内での拡散や音の減衰に制限されないと想定しています。

図2:測定に使用されるエコーで分類した精密超音波計測技法。

精密厚さ計測に使用される探触子は、通常は広帯域の一振動子設計です。 その他の一般的な種類の探触子として、二振動子型(「デュアル」)があります。通常、本稿で対象としている精密計測作業ではなく、腐食調査用途に使用されます。 二振動子型探触子は、名前からわかるように、片方は送信用、他方は受信用として、それぞれ独立して遅延材に接合された対の圧電振動子を使用します。 厚さ測定は修正版モード1法で行われ、最初の底面エコーを読み取り、遅延材を通過する伝搬時間と等しいゼロ点調整を減じます。 二振動子型探触子は通常、堅牢で、高温にも耐え、孔食などの局所的に薄くなった状態の検出に高い感度を示します。 ただし、V‑パス補正に関連したゼロ点移動やタイミング誤差が発生する可能性があるため、一般には、精密厚さ計測用途にはお勧めできません。 二振動子型探触子の使用に関する詳細については、オリンパスSSAまでお問い合わせいただくか、このアプリケーションノートをご覧ください。

3. 性能と精度に影響を与える要因

特定の用途に適した探触子の選択は、必要な厚さ測定の範囲と分解能、試験材料の音響特性、部品の形状によって決まります。 多くの場合、測定に必要な範囲を代表する校正用試験片で実験することで、最もよい選択を行えます。 一般に、必要な範囲全体で許容可能な結果が得られて、最も周波数が高く、最も直径の小さい探触子が推奨されます。 直径の小さい探触子は、試験材料に音響結合しやすく、特定の接触圧力において最も薄い接触媒質で測定することが可能になります。 また、周波数が高くなると、探触子はより短い立ち上がり時間でエコーを生成するため、厚さ測定の精度が向上します。 一方、試験材料の音響特性や表面の状態によっては、貧弱な音響結合や、散乱または減衰による信号損失を克服するために、大きく周波数の低い探触子が必要な場合もあります。 最適な探触子を選択するには、薄い材料の分解能を得るために浸透性を損なう場合があります(その逆も同様です)。 全体に必要な測定範囲に対応するために、2つ以上の探触子が不可欠になることもあります。 探触子の選択についてサポートが必要な場合は、オリンパスSSAまでお問い合わせください。

一般的な計測用途において、性能と精度に影響する重要な因子は多数あります。

a)校正:超音波測定の精度は、厚さ計が正確かつ丁寧に校正された程度に応じてよくなります。 すべての超音波計には、用途に適切な音速とゼロ点調整を校正する方法が用意されています。 メーカーの指示に従って、校正を実施し、定期的に検証することが必要不可欠です。 音速は、常に測定対象となる材料に合わせて設定する必要があります。 ゼロ点調整は、通常、探触子の種類、探触子のケーブルの長さ、使用する測定モードに関係します。

b)試験片の表面の粗さ:試験片の前面と背面の両方が滑らかで互いに平行な場合に、最高の測定精度が得られます。 接触面が粗いと、厚くなった接触媒質層で生じる反響音によって、測定可能な最小厚さが大きくなる可能性があります。 探触子の下にある音響媒質層の厚さにばらつきがあることで、精度低下が生じる可能性もあります。 試験片のいずれかの表面が粗い場合は、探触子に見えるわずかに異なる音響経路の多重化によって、返されるエコーが歪む場合があり、測定の不確実さが幾分生じます。

c)カプリング手法:モード1の直接接触型測定では、接触媒質層の厚さが測定の一部となり、校正されたゼロ点調整の部分で補正されます。 最大限の正確性を確保するには、常に一貫したカプリング手法を行う必要があります。 これは、十分に粘度が低い接触媒質を使用し、合理的な読み取り値を得るのに十分な接触媒質のみを採用し、探触子に均一な圧力をかけることにより達成できます。 実際に行ってみれば、中程度から強めの圧力をかけると、再現性のある測定値が得られることがわかります。 一般に、小さな直径の探触子の方が、大きな直径の探触子よりも、過剰な接触媒質を排除するための結合力が小さくて済みます。 以下で説明するように、すべてのモードにおいて、探触子を傾けるとエコーが歪み、正確な測定値が得られません。

d)試験片の曲率:試験片に対する探触子の配置に関係しています。 曲面で測定を行うときは、探触子を試験対象物のほぼ中心線上に配置し、表面に対して可能な限り垂直に保つことが重要です。 この配置を維持するのに、バネ式のVブロックホルダーが役立つことがあります。 一般的に、曲率の半径が小さくなるほど、探触子のサイズを小さくする必要があるため、探触子の配置がより重要になります。 半径が非常に小さい場合は、水浸アプローチが必要です。 場合によっては、最適な配置を維持するための補助として、波形表示を観察すると便利です。 多くの場合、波形表示を観察しながら作業すると、オペレーターは最適な方法で探触子を掲げていることを「実感」できます。

曲面上では、読み取り値を得るのに最低限の接触媒質を使用することが重要です。 接触媒質が過剰だと、探触子の端と曲面試験面の間にフィレットが形成され、そこで音が反響して誤った信号が生成され、誤った読み取り値の生成につながる可能性があります。

e)テーパーまたは偏心:試験片の接触面と背面との間でテーパーや偏心が生じると、ビームの幅内で音響経路がばらつき、返されるエコーが歪みます。 測定精度が低下します。 外側の面と内側の面との位置ずれが大きい場合は、測定は不可能です。

f)試験材料の音響特性:特定の工学材料で、超音波厚さ測定の精度と範囲を制限する可能性のある状況を次に示します。

  • 音響散乱:鋳造ステンレス鋼、鋳鉄、グラスファイバー、複合材料などの材料では、音波エネルギーが、鋳造内における個々の粒から、またはグラスファイバーや複合材料内におけるファイバーとマトリックスの境界から散乱します。 あらゆる材料の気孔でも同様です。 誤った散乱エコーの検出を防ぐには、測定器の感度を調整する必要があります。 補正により、材料の背面から返される、有効であるが小さなエコーを判別する能力が制限され、ひいては測定範囲が制限される場合があります。
  • 音波の減衰または吸収:低密度プラスチック、ポリウレタン、ゴムなど一部のポリマーでは、超音波計測に使用される周波数において、音波エネルギーが急速に減衰する場合があります。 この減衰は一般に、温度上昇に伴って増加します。 これらの材料で測定できる厚さの最大値は、多くの場合減衰によって制限されます。
  • 音速のばらつき:超音波厚さ測定が正確であるためには、材料の音速が計器の校正と一致している必要があります。 一部の材料では、位置によって音速が大幅に異なります。 この現象は、特定の鋳造金属において、冷却速度の違いに起因する粒状構造の変化や、粒状構造に対する音速の異方性が原因で起こります。 グラスファイバーでは、樹脂とファイバーの比が変化したことが原因で、局所的な音速のばらつきが生じる場合があります。 多くのプラスチックやゴムでは、温度によって音速が急激に変化するため、測定を行う温度で音速校正を実施する必要があります。

g)位相反転または位相の歪み:返されたエコーの位相または極性は、境界材料の相対音響インピーダンス(密度×音速)によって決まります。 市販の測定器では一般的に、試験片の裏面に空気または液体(金属、セラミックス、プラスチックよりも低い音響インピーダンスを持ちます)が存在する慣習的な状況を想定しています。 しかし、特殊なケース(金属上におけるガラス/プラスチックコーティングの測定、鋼上における銅被覆の測定など)では、このインピーダンス関係が逆転し、位相が反転したエコーが発生します。 こうした場合に精度を維持するには、適切なエコー検出極性に変更する必要があります。

異方性材料または不均質材料(粗い粒子の鋳造金属や、特定の複合材料など)では、より複雑な状況が発生する可能性があります。材料の状態によって、ビーム領域内に複数の音響経路が存在するようになります。 こうしたケースでは、位相の歪みによって、明確には極性が正とも負とも判別できないエコーが発生する可能性があります。 この場合、測定精度への影響を判断するために、基準試験片を用いた慎重な検証実験が必要となります。 影響が一貫していれば、通常はゼロ点調整によって補正することが可能ですが、エコーの形状が変化する場合は、高い精度の厚さ測定は不可能です。

4. 接触媒質

超音波計測には、さまざまな接触媒質を使用できます。 プロピレングリコールやグリセリンがよく使用され、ほとんどの用途に適した接触媒質です。 非常に厚い材料や減衰が大きい材料など、音波エネルギーの伝播速度を最大限に高くする必要がある用途では、グリセリンが推奨されます。 ただし、金属によっては、グリセリンは水を吸収するため腐食が進み望ましくない場合があります。 常温での測定に適したその他の接触媒質としては、水、各種オイル・グリース、ジェル、シリコーン溶液などがあります。

滑らかな表面を扱う一部の用途では、探触子の面(または遅延材)と試験片との間に、液体の接触媒質の代わりに、薄い柔軟な膜(薄いポリウレタン片など)を使用することも可能です。 このアプローチでは、多くの場合、測定器のセットアップパラメーターを変更し探触子を試験片の表面にしっかり押し付ける必要があります。

後述するように、高い温度での測定には、高温用に特別に調製された接触媒質が必要になります。

5. 高温測定

高温での測定(約50°C(125°F)を超過)は、特殊なカテゴリーです。 標準的な直接接触型探触子は、この制限より高い温度にさらされると損傷または破損します。 探触子の製造に使用されている各種材料の熱膨張率が異なるため、高温で剥がれるからです。 直接接触型探触子は、素手で触れないほど熱い面には決して使用しないでください。 高温測定は、常に遅延材付き探触子(適切な高温用遅延材を備えたもの)または水浸型探触子を使用したモード2またはモード3で行う必要があります。

音速は、すべての材料において温度とともに変化します。通常は、材料が冷たくなると速くなり、熱くなると遅くなります。また、凝固点および溶融点付近では急激に変化します。 影響は、プラスチックやゴムの方が金属やセラミックスよりも大きくなります。 音速の変化は、弾性係数と密度の変化に関係しており、材料と温度の範囲によっては、関係はかなり非線形になる場合があります。 最大限の精度を得るには、測定を行うときと同じ温度で、測定器の音速設定を校正する必要があります。 室温での音速に設定された測定器で熱い材料を測定すると、多くの場合、大きな誤差が発生します。

約100°C(200°F)より高い温度では、高温用の特殊な接触媒質を使用することが推奨されます。 さまざまな接触媒質が市販されています。

6. オンライン測定

連続したオンライン超音波厚さ計測は、一貫した工程の監視が行われていれば、ほとんどの工学材料で実施可能ですが、押出成形プラスチック、金属板、金属パイプで特に適しています。 通常、バブラーまたは液体噴出装置で作った水柱によって、または水槽内で音波エネルギーを試験片に音響結合することにより行われます。 いくつかの特殊なケースでは、モード1で機能するスライド式直接接触型探触子が使用されますが、通常は、モード2またはモード3で測定が行われます。 精度の高いオンライン超音波測定を行うには、音速のばらつきによる誤差を避けるために、材料の温度が安定する必要があります。 一貫した音響結合を確保するには表面が十分滑らかな必要があり、探触子と試験片の正確な位置合わせを維持するために、何らかのタイプの固定が不可欠です。

7. ケーブル長

水中試験などの特殊な用途では、探触子と超音波測定器をつなぐ長いケーブルが必要になります。 この作業のほとんどは腐食計測に関連するもので、本稿で扱う内容の範囲外になりますが、一部の精密計測用途にも長いケーブルが必要になります。 性能に大きな影響を与えるケーブルの長さは、探触子の周波数や、精度と最小測定範囲の要件に応じて、用途ごとに異なります。 20MHzでは、ケーブルの長さが約1m(3フィート)を超えると、ケーブルでの反射が波形に影響を与えます。 これより低い周波数では、若干長いケーブルも特に心配なく使用できます。 ただし、長いケーブルを使用した場合の性能は、特にケーブルの長さが約3m(10フィート)を超える場合には、必ず用途の要件を考慮して実験による評価を行ってください。 モード1の測定では、ケーブルでの反射で励起パルスが長くなり、測定できる最小肉厚が制限される場合があり、ケーブル内を電子パルスが伝播する時間を補正するためのゼロ点調整が必要です。 モード2およびモード3では、ケーブルでの反射により境界面エコーと底面エコーに歪みが生じる可能性があり、極端なケース(30m(100フィート)より長いケーブル)では、ケーブルでの電気遷移と等しい間隔で、必要な信号に続いて大きな誤った信号が発生する場合があります。

8. 測定のモードに関する追記

モード1:励起パルスから最初のバックエコーまで

パルスエコーチャンネルとTOFDチャンネルを組み合わせることで、溶接部の全域をカバーできるようになります。

モード1での直接接触型探触子を使用した超音波厚さ測定は、多くの場合、実装が非常に簡単で、一般的なほとんどの用途に使用できる方法です。 ほとんどの材料で、探触子から試験片への超音波の音響結合効率が最も高くなるのは、直接接触型探触子による測定です。 モード1の直接接触測定は、最小材料厚がプラスチックで約0.25mm(0.010インチ)、金属で0.5mm(0.020インチ)より小さくならず、精度が±25μm(0.001インチ)あれば十分であり、試験片の温度が室温かそれに近く、直接接触で音響結合が可能な形状の場合に、一般的に推奨される方法です。

この測定モードにおいて、励起パルスが発生してから、最初にエコーが返されるまでの時間間隔には、パルスが探触子の当板と音響結合流体を通過する伝搬時間を表す小さな時間増分、ケーブル遅延、検出されたエコーの立ち上がり時間または周波数成分によるオフセットが含まれます。 これらの因子を補正するために、測定器にはゼロ点調整機能が装備されており、測定された時間間隔の合計から、これらのさまざまな固定遅延の合計に等しい時間が効果的に減じられます。 ゼロ点調整は通常、探触子の種類を変更したときに行う必要があります。 ゼロ点調整は、厚さと音速が既知の基準試験片を使用して行えます。音速が未知の場合は、それぞれ異なる既知の厚さを有する2種類の基準試験片を使用して行えます。この場合、音速とゼロ点の両方を求めることができます。

モード2:境界面エコーから最初の底面エコーまで

モード2:境界面エコーから最初の底面エコーまで

励起パルスに続く最初の2つのエコー間で行われる測定は、モード2に分類されます。 通常、これには境界面エコー(遅延材(または水中経路)と試験片外側表面の間における境界を表す)と底面エコー(内側の表面を表す)における測定が含まれます。

モード2測定を行うには、測定に境界面エコーと底面エコーという2つの有効なエコーが必要である事実に基づいて、考慮しなければならない条件がいくつかあります。 まず、境界面エコーの存在を確保する必要があります。 柔らかいプラスチックやシリコーンなどの低インピーダンス材料を対象に水浸測定を行う場合に、試験材料の音響インピーダンスが水の音響インピーダンスと非常によく似ている事例があります。 よく似た状況が、遅延材とほぼ同じインピーダンスを持つ材料(一般にはポリマー)に遅延材付き探触子を使用する際に発生する場合があります。 このような場合は、水(または遅延材)と試験材料でインピーダンスが一致することにより、境界面エコーが減少して非常に小さな振幅になり、高い信頼性で検出できなくなる可能性があります。 遅延材付き探触子では通常、異なる遅延材に切り替えることによって(例えば、一般的なポリスチレン遅延材からエポキシまたはポリイミド)、問題を改善できます。 水浸測定でこの問題が発生する場合は、効果的な水浸接触媒質として水以外の液体を使用することはほぼ不可能であるため、解決が困難な可能性があります。

モード2のセットアップでは、試験片から返される底面エコーが境界面エコーの倍数より前に到達しなければならないため、測定できる最大厚さは、遅延材または水中経路の長さによって決まります。 場合によっては、遅延材または水中経路を長くすることにより範囲を広げることができますが、モード2は通常、厚い材料の測定にはあまり適していません。

モード2で測定する場合は、境界面エコーと底面エコーの両方における位相または極性を監視し、適宜、反転の補正用に機器の検出極性調整やゼロ点調整を行うことも必要です。 金属の試験片にプラスチックの遅延材が音響結合される場合は、低い方から高い方へのインピーダンス境界(正の境界面エコーとみなされる)を示すのに対し、多くのポリマー材料に同じ遅延材が音響結合される場合は、相対音響インピーダンスの高い方から低い方への関係(負の境界面エコーを表す)を示す可能性があります。 これら2つの状況間では境界面エコーの極性が逆転しており、測定器が正しく調整されていないと測定エラーを生じます。 これは、遅延材付き探触子を有する測定器を金属の校正基準ブロックでセットアップした後に、プラスチックの測定に使用した場合に発生する可能性があります。 また、粗い金属面では、探触子の下にある接触媒質との隙間が原因で、負の境界面エコーが生成される場合があります。インピーダンスの高いプラスチックでは、正の境界面エコーが生成される場合があります。 オペレーターは、エコーを観察することにより、特定のケースにおいて正しい検出極性を選択することができます。 図3に、一般的によく見られる条件の例をいくつか示します。

図3:モード2測定におけるエコーの極性
図3:モード2測定におけるエコーの極性
図3:モード2測定におけるエコーの極性

曲率半径の小さな材料を測定するセットアップでは、ビーム形状と前面・背面曲率の間における複雑な相互作用がエコーの形状に大きく影響し、境界面エコーと底面エコーの位相に歪みが発生する場合があります。 このような用途では、実際の測定対象となる材料の形状を代表する基準試験片に対して機器をセットアップし、位相の歪みの影響がゼロ点調整で補正できるようにすることが必要不可欠です。

モード3:境界面に続くエコー間

モード3:境界面に続くエコー間

この定義に従ったモード3の測定技法には、境界面エコーに続いて連続する背面エコー間における時間間隔の測定が含まれます。 このモードは通常、試験材料が比較的薄く、最も高いレベルの精度が必要な場合のために留保されています。 モード3測定は、音響インピーダンスが1x106gm/cm2-秒より高い低減衰工学材料(ほとんどの金属、セラミックス、ガラスが含まれます)に最適です。 この種類の材料では、連続した反射はすべて同じ極性となり、連続するエコーの相対振幅は、材料からポリスチレンまたは水への音波エネルギーの通過率によって決まります。 これらの材料は両方とも音響インピーダンスが比較的低いため、連続するエコー信号振幅の比率は、通常50%または-6dBを超えます。

モード3測定を行う場合、ほとんどの用途で、遅延材付き探触子の方が水浸型探触子より便利です。 遅延材付き探触子を使用することで、周波数と遅延材の長さに応じて、約0.15mm(0.006インチ)~最大12.5mm(0.5インチ)の範囲にわたる測定を行えます。 直接接触型探触子での測定と同様に、曲率半径が小さくなるのに合わせて、遅延材の直径またはアクティブな振動子のサイズも小さくする必要があります。 約3mm(0.125インチ)より小さな半径では、水浸型探触子の方が良好な音響結合が得られ、測定に適しています。

モード3のセットアップでは、試験片から返される2つの底面エコーが境界面エコーの倍数より前に到達しなければならないため、測定できる最大厚さは、遅延材または水中経路の長さによって決まります。 場合によっては、遅延材または水中経路を長くすることで範囲を広げることができますが、モード3は厚い材料の測定にはあまり適していません。

表面仕上げが約3μmRMSの加工表面で、正確な厚さ測定が必要な場合は、多くの場合、遅延材付き探触子を使用したモード3測定の方が、直接接触型探触子を使用したモード1測定よりも再現性の高い読み取り値が得られます。 連続するエコーの反響では、接触媒質層のばらつきのある厚さ(直接接触型探触子を使用して測定した時間間隔に追加される)が差し引かれる傾向にあるためです。 同じ一般原理が、塗装された表面にも当てはまります。複数のエコーが、金属内または塗装されていないその他の高インピーダンス材料内の反響を表します。 ただし、モード3測定が行える表面の種類は制限され、重大な粗さや腐食がある場合は、この技法は適用されません。 モード3測定には、少なくとも2つのクリーンな底面エコーが必要であり、状況が悪くなるにつれ、粗さによる信号損失で最終的に2つ目のエコーが消されてしまいます。

モード3測定に集束水浸型探触子を使用し、特定の半径を測定する場合、必ず初期のセットアップ中に波形を観察する必要があります。 同じ周波数とサイズの非集束水浸型探触子と比較した場合における集束水浸型探触子の利点は、多くの場合、より大きなビーム角度またはビームの位置ずれを許容でき、曲面試験片との音響結合が向上することです。 誤った信号や望ましくない信号が現れる可能性があり、電子的に除去しなかった場合は、不正確な測定値につながります。

考えられる2つの状況を図4に示します。 図4aに、モード3測定の最適なエコーを示します。一連のクリーンなエコーが複数続いています。 図4bでは、最初の底面エコーにおける1つ目のサイクルと2つ目のサイクルの間で、時間間隔の測定が不正確に行われています。 この状態は、エコーの形状が曖昧な場合には必ず存在します。位置ずれと正しくない集束の両方が原因になります。 図4cは、最初の底面エコーと、モード変換された横波エコー(集束水浸型探触子を使用し、探触子と試験片表面間の水中経路が長過ぎる場合に生じる可能性がある)の間における誤った時間測定値を示しています。 厚さ測定で複数のクリーンなエコーを得るために、集束水浸型探触子は短い集束距離で理想的に機能します。 集束距離で、もしくは集束距離付近で動作した場合、通常は中間横波モードエコーが発生します (これが問題になるのは、モード3測定のみです。モード2では、最初の底面エコーに続くエコーは一切問題になりません)。 曲率半径の小さなターゲットで屈折が生じたり、垂直入射以外で到達したビーム成分のモード変換が生じたりする場合に、同様の影響が発生することがあります。 一般的には、集束と水中経路のさまざまな組み合わせを使用して実験を行い、特定の測定用途において、最もクリーンなエコーが複数生成されるのはどの組み合わせかを特定することが推奨されます。

4a. クリーンなエコーの正しい測定
4a. クリーンなエコーの正しい測定
4b. エラー:単一のエコーにおける連続する波の測定
4b. エラー:単一のエコーにおける連続する波の測定
4c. エラー:モード変換横波エコーの測定
4c. エラー:モード変換横波エコーの測定


図4:モード3の波形の例

付録1は、これらの測定モードが適用されるいくつかの典型的な用途をまとめたものです。 厚さの範囲、精度、探触子のお勧めは、一般的なガイドとしてのみ示したものです。 材料の音響特性や形状の影響が異なる可能性があるため、実際の用途での正確な範囲や精度は、必ず問題となる材料の基準試験片を使用して確認する必要があります。 この表で示すよりも大きな範囲にわたって測定が可能な場合もあれば、これより小さな範囲でしか測定できない場合もあります。 探触子のお勧めが示されていますが、多くの場合、2種類以上の異なる探触子を使用しても、指定された範囲にわたって基本的に同等の結果が得られます。

結論

本稿では、精密超音波厚さ計測における主な側面をいくつか紹介しました。 ここで説明した点に関する詳細や、特定の機器に関するお勧めについては、オリンパスSSAまでお問い合わせください。

付録I:選択した探触子における測定範囲の例

注記:厚さの範囲はすべて、四捨五入した概数です。 実際の測定範囲は常に、機器のセットアップや、部品の形状、表面の状態、微細構造など特定の材料特性に左右されます。 モード1測定におけるプラスチックの最大厚さは、プラスチックの種類によって変わるため、ここでは最小値のみを示しています。

この表には、最も一般的な探触子と測定状況の一部のみを取り上げています。 他にも多数の可能性があります。 詳細については、オリンパスNDTまでお問い合わせください。

探触子(周波数、直径、種類) 測定モード 範囲(金属) 範囲(プラスチック)
20MHz、0.125インチ直接接触 1 0.020~1.5インチ
0.5~38mm
最小0.008インチ
最小0.2mm
10MHz、0.25インチ直接接触 1 0.030~10インチ
0.75~250mm
最小0.010インチ
最小0.5mm
5MHz、0.5インチ直接接触 1 0.050~20インチ
1.25~500mm
最小0.020インチ
最小0.5mm
2.25MHz、0.5インチ直接接触 1 0.080~25インチ
2~625mm
最小0.050インチ
最小1.25mm
1MHz、1インチ直接接触 1 0.150~25インチ
4~625mm
最小0.100インチ
最小2.5mm
0.5MHz、1インチ直接接触 1 0.250~25インチ
6.25~625mm
最小0.200インチ
最小5mm
20MHz、0.125インチ遅延材付き 2 0.015~0.400インチ
0.4~10mm
0.005~0.200インチ
0.125~5mm
20MHz、0.125インチ遅延材付き 3 0.008~0.200インチ
0.2~5mm
なし
10MHz、0.25インチ遅延材付き 2 0.020~0.750インチ
0.5~20mm
0.012~0.250インチ
0.3~6mm
10MHz、0.25インチ遅延材付き 3 0.012~0.500インチ
0.3~10mm
なし
5MHz、0.5インチ遅延材付き 2 0.050~1.00インチ
1.25~25mm
0.040~0.500インチ
1~10mm
5MHz、0.5インチ遅延材付き 3 0.050~0.500インチ
1.25~10mm
なし
2.25MHz、0.5インチ遅延材付き 2 0.080~1.00インチ
2~25mm
0.050~0.500インチ
1.25~10mm
2.25MHz、0.5インチ遅延材付き 3 0.060~0.500インチ
2.5~10mm
なし
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