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事例・お役立ち資料

斜角トランスデューサアクセサリー紹介

探触子とウエッジで構成される斜角トランスデューサーアクセサリーは、超音波非破壊検査において非常に重要で、多種多様な溶接検査でよく使用されています。また、金属板、パイプ、ビレット、および鍛造品のほか、機械加工部品や構造部材の表面に対し垂直な方向の割れの検知にも使用されています。ここでは、斜角試験の理論を簡単に紹介するとともに、ユーザーの助けになる注意およびヒントをいくつか示します。

斜角トランスデューサーアクセサリーが使用される理由
試験片の表面に垂直な、あるいはその表面に対して傾いた割れなどの不連続部分は通常、音波ビームに対する向きが原因で、垂直ビームによる試験方法では検出されません。波長よりもかなり反射面が小さくなっている垂直方向の割れは、垂直ビームからの音エネルギーの大部分を反射しないからです。また、傾いた割れは探触子の方向に音エネルギーを全く反射しないことがあります。こうしたことは、多くの種類の溶接部、金属構造部品、その他の重要な構成部材で起きる可能性があります。しかし斜角トランスデューサーアクセサリーは、選択した角度で試験片に対して音エネルギーを向けることができます。垂直方向の割れは、下の図に示したように、コーナートラップと呼ばれる経路に沿って、斜めの音エネルギーを反射します。


斜めの音波ビームは、試験片の底面対して垂直な割れ(第1レグ)や、その底面からの反射後、溶接部面にある垂直な割れ(第2レグ)を検知します。さまざまな部品形状や欠陥の種類に対応するために、多様なビーム角度およびプローブが使用されています。不連続部分への斜角の場合は、斜角トランスデューサーアクセサリーを適切に選択すると、最適な角度で探触子に反射する音波を出すことができます。


動作の仕組み -- スネルの法則
超音波周波数での音エネルギーは高指向性で、欠陥検知に使用される音波ビームは明確に定義されています。音が境界で反射する状況では、反射の角度は入射角に等しくなります。垂直入射で表面にぶつかった音波ビームは垂直に反射します。斜めに表面にぶつかった音波ビームは同じ角度で反射します。


ある素材から別の素材に送られた音エネルギーは、スネルの法則に従い屈折します。屈折とは、音波ビームが速度が異なる2つの素材間の境界を通る際に曲がることです。垂直に進むビームは垂直方向に続きますが、斜めに境界にぶつかったビームは次の式に従って曲がります。

Sin θ 1

V 1
-------- = -----
Sin θ 2

V 2

ここで

θ 1 = 第1素材の入射角
θ 2 = 第2素材の屈折角
V 1 = 第1素材の音速
V 2 = 第2素材の音速

一般的な斜角トランスデューサーアクセサリーは、モード変換とスネルの法則を利用して、試験片中に、選択した角度(一般に30/45/60/70度)の横波を生成します。表面に対する縦波の入射角が大きくなるにつれ、音エネルギーの多くの部分が第2素材で横波に変換され、角度が十分に大きければ、第2素材のすべてのエネルギーが横波の形になります。このモード変換現象を利用するために共通の斜角を設計することには2つのメリットがあります。第1に、鋼材および類似材料中に横波を生成する入射角で、エネルギーの伝達がより効率的になります。第2に、最小欠陥サイズ分解能が横波の利用により向上し、一定の周波数においては、横波の波長は同等の縦波の約60%であるため、音波ビームの波長が小さくなるにつれ最小欠陥サイズ分解能が増加します。
従来のウエッジは、1ピースでできた機械加工プラスチック構造です。弊社のウエッジは複数材質でできた構造で、音の伝送を最適化する透明なプラスチックインサートが、消音特性と耐久性に合わせて選択された構造材料で囲まれてでできています。そのため一般的な一体型構造に比べ、S/N比と耐摩耗性の両方が向上しています。


一般的な斜角トランスデューサーアクセサリー
すべての標準ウエッジが横波モードで動作します。一部の特殊な用途に、縦波または表面波を生成する構造のウエッジもあります。必要に応じて、縦波ウエッジを粗粒子材料で使用すると散乱ノイズは最小になります。ただし、散乱ノイズを低下させる縦波長がより長ければ、小さい不連続部分に対する感度の低下も招きます。表面波ウエッジは、名前が示すとおり、表面破断割れの検知に使用します。

適切な斜角トランスデューサーアクセサリーの選択
多くの場合に、検査者は問題になっている試験を決定する検査コードまたは手順に応じて、特定の種類の斜角トランスデューサーアクセサリーを扱います。斜角性能に影響するパラメーターには、ウエッジが生成する斜角のほか、探触子周波数や振動子サイズがあります。最適な斜角は一般に、試験片の形状と、試験で見つける不連続部分の向きによって決まります。探触子周波数は浸透および欠陥分解能に影響します。周波数が増加すると、音波が特定の材料中で進む距離は減りますが、小さい不連続部分の分解能は向上します。周波数が減少すると、音波が進む距離は増えますが、最小検知可能欠陥サイズはより大きくなります。同様に、振動子サイズがより大きいと、適用範囲の増加によって検査時間は短くなることがありますが、小さい不連続部分からの反射エコーの振幅は減少します。振動子サイズがより小さいと、小さい不連続部分からの反射振幅は増加しますが、小さいビームが狭い範囲しかカバーしないため検査時間がより長くなることがあります。これらの相反する要因は、特定のアプリケーションで、特定の試験要件に基づいてより有効な方を選択する必要があります。

ある特定の一部の斜角推奨については、ASTM規格E-164「Standard Practice for Contact Examination of Weldments」と「AWS Structural Welding Code」セクション6に記載があります。これらの文書は両方とも溶接検査のガイドラインとして書かれていますが、説明されている基本原理は、金属製品での割れなどの不連続部分の試験にかかわる他の多くのアプリケーションに適用できます。試験手順では一般に、試験の開始前にIW基準試験片または類似の参照基準に従って、感度、ゼロオフセット、ビームインデックスポイント、および屈折角度などの基本的な機能パラメーターを検証する必要があります。

検査用にコードまたは手順が指定も生成もされていない場合には、斜角トランスデューサーアクセサリーの選択は次のように行ってください。既知の欠陥や人為的に引き起こした欠陥を、問題となる部品の参照基準に追加して、トレーニングを受けた検査者が評価を行い、その評価に基づいて選択してください。適切な参照基準があれば、検査者は、特定のアプリケーションで最良かつ信頼性の高い反射を得られる探触子およびウエッジの組み合わせを選択できます。

便利な一体型の斜角(1つの探触子/ウエッジアセンブリー)を使用することがあります。スナップインとねじ式の探触子は、機能的効果が性能に影響しない場合にお好みで選べます。

スチール以外の試験材料
他の規定が特になければ、標準ウエッジは、約3,250m/S(0.1280インチ/uS)の横波速度で、鋼材中に横波を指定された角度で生成するように設計されています。屈折角は媒体の音速によって変わるため、スチール用のウエッジは他の材料では様々な屈折角を生成します。アルミニウムで使用するウエッジは標準製品として使用可能です。他の材料の場合は、カスタム品の特殊ウエッジとしてお見積りします。

以下のスネルの法則に基づいた単純な式により、他の金属で標準(スチール)ウエッジによって生成される屈折角を計算することが可能です。

Sin θ 1

V 1
-------- = -----
Sin θ 2

V 2

ここで
θ 1 = ウエッジの公称角度
θ 2 = 試験材料中の屈折ビーム角度
V 1 = スチール中の公称横波音速(3,250m/S、0.1280インチ/uS)
V 2 = 試験材料中の横波速度

スチールとは音速が大幅に異なるプラスチックまたはセラミックなどの非金属材料では、屈折波が横波以外のモードで存在することがあります。低速のプラスチックでは、屈折波は縦になるので、屈折角の計算時にプラスチックの縦速度をV2の値に使用してください。高速のセラミックでは、ほとんどの音エネルギーが表面波に変換される場合があります。金属以外の材料にウエッジを選択する際の助けについては、オリンパスにお問い合わせください。

湾曲ウェッジ
小径パイプやチューブ、その他の曲がった試験片を試験する場合には、最適な音響カップリングを確保するために、湾曲した(丸みがついた)ウエッジを推奨します。コーナー度合いが増すと、その分、ウエッジ表面と試験片との接触が少なくなります。この結果、部品の内外にカップリングされる音エネルギーの量は減り、かつ接触媒質層から反射するノイズの量は増えます。以下の4通りの湾曲ウエッジがあります。


溶接部の超音波検査に関するIIWハンドブックでは、ウエッジと試験表面間のギャップが0.5mm(約0.020インチ)を超える場合には必ず湾曲ウエッジを使用することを推奨しています。このガイドラインに従い、部品半径がウエッジ寸法(長さまたは幅)の2乗を4で割った値より小さい場合には必ず湾曲ウエッジを使用してください。

W 2
R < ------

4

ここで
R = 試験表面の半径
W = ウエッジの幅(軸方向の試験の場合)またはウエッジの長さ(周方向の試験の場合)
検査要件のパラメーターの範囲内で可能であれば、小型ウエッジに切り替えて湾曲表面でのカップリングを向上させます。しかし、検査の信頼性が低下するところまで信号強度が減少するか、触媒媒質ノイズが増加する場合には、必ずコンタリングを検討する必要があります。

いずれの方式およびサイズのウエッジにも、4つの向きそれぞれに可能な最小輪郭半径があり、これは性能の低下を招かずに除去できるウエッジ材料の量に基づいています。詳細なガイドラインについては、オリンパスから入手可能です。

焦点式二振動子斜角ビーム
大多数の斜角トランスデューサーアクセサリーが一振動子の非焦点式探触子を使用します。ただし、粗粒子鋳造ステンレス鋼など、音の減衰・散乱が大きい材料を含む一部の試験においては、焦点式の二振動子斜角が便利です。それらは送信と受信に別々の振動子を使用するため、二振動子型探触子は一般に、リングダウンまたはウエッジのノイズに関連した問題に悩まされることなく、高励起エネルギーで駆動可能だからです。焦点式により、試験片内の選択した経路に、音エネルギーをより集中させることが可能になり、その領域における不連続部分を感知しやすくなります。焦点式の二振動子型斜角の詳細については、オリンパスにお問い合わせください。

高温ウエッジ標準の斜角トランスデューサーアクセサリーは、通常の環境温度でのみ使用するように設計されています。高温で金属を検査する必要がある場合は、特殊な高温ウエッジが使用可能です。これらのウエッジの一部は、高温480℃の表面との短時間の接触に耐えられます。ただし、高温ウエッジで生成される経路に関して特別な注意が必要です。いずれの高温ウエッジの場合も、そのウエッジ材料中の音速は温度の上昇に伴い遅くなります。したがって、金属中での屈折角はウエッジの温度上昇とともに大きくなります。特定の試験においてこれが心配な場合は、実際の動作温度にて屈折角を検証してください。実際問題として、試験中に熱変動があるため、実際の屈折角を正確に決定するのは困難な場合が多くあります。

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