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ハンドヘルド蛍光X線分析計による自動車産業のPMI(材料確認)検査


背景:自動車産業におけるPMI(材料確認)の重要性

製造業においては、適切な材料を使用することによって、材料に起因する不具合の発生を防止することが重要です。 自動車の製造では、同じ組立品内、あるいは車両内の距離的に近い位置に異なる材料が使用されることがよくあり、材料が混用されることもあります。 多くの場合、自動車メーカーはサプライヤーに対して厳しい品質管理(生産部品承認プロセス:PPAP)の実施を課しており、すべての原材料の厳格な管理を要求しています。万一不適合の合金や異種材料が納入されると、そのサプライヤーは信用を失うことになり、利益損失に繋がります。あるサプライヤーについて、承認済みPPAP(たとえば不適合材料)からの乖離が発見された場合、自動車メーカーは製造ラインを止め、分単位で計算した停止時間補償をサプライヤーに課します。しかし、製品に使用する材料の健全性を保証する最終責任はあくまでも自動車メーカーが負わなければなりません。したがって、自動車メーカーは品質管理と品質保証を担保するために、納入される材料の試験を実施する必要があります。

自動車産業にとって、納入される材料の試験は難しい課題です。同じ部品や製品に異なる複数の材料が使用されていることがあり、しかも外観からは区別が付かないこともあります。蛍光X線分析法(XRF)はこのような品質管理に役立つ重要なツールです。XRFを利用すれば、異種合金や金属を非破壊的に検査して同定することができます。 

QCとPMI(材料確認)に役立つオリンパスハンドヘルド蛍光X線分析計DELTA

ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAは、自動車産業が必要とする迅速で高精度な合金品種の判定を実施する理想的な装置です。 携帯型なので簡単に試験現場に持ち込み、対象物の大きさや形状にかかわらず、非破壊で成分分析を行うことができます。DELTAは、合金の化学組成分析(最高30元素までを同時に分析)と合金品種・番号の判定を、わずか数秒で実施可能です。非常に分かり易いユーザーインターフェースを備えているので、試験結果を規格と比較することも簡単で、素早く「規格外れ」の元素と残留成分を同定することができます。また、試験結果をデータベースへエクスポートして保管することも容易です。DELTAのレポート作成ソフトウェアを使用すれば簡単に公式な分析レポートを作成することができます。さらに、DELTA分析計から直接ワイヤレスプリンターへデータを送信して、その場でレポートを印刷することも可能です。

DELTAは、自動車メーカーが高度な品質規格を達成するために役立つ分析計です。この目的を実現するため、DELTAは次のような機能を備えています(モデルにより異なる):

  • 包括的な合金品種判定: 合金ライブラリーには500種以上の合金品種が区別されて登録されています。 工業規格に基づく残留元素(トランプ元素)ライブラリーを利用することにより、合金品種のマッチングがより単純になります。ユーザーによる既存ライブラリーの変更や、独自ライブラリーの作成も可能です。  
  • 速度、感度、精度に優れた軽元素分析: PMI分析では非常に高度な性能が要求されます。最適化されたエレクトロニクス設計、安定性に優れたX線管、大口径のシリコンドリフト検出器(SDD)の巧みな組み合わせがこれを実現します。
  • 高度な試験スループットに対応するSmartSort(スマートソート)機能: 自動的に判断して軽元素の分析時間のみを延長し、不要な分析時間を削減します。
  • 高温の対象物の検査にも対応可能な高効率ヒートシンク: 最高約420℃までの表面を検査することができます。
  • スポットコリメーター: 小さな分析対象エリアをバックグラウンドから区別するのに役立つ光学式コリメーターです。
  • パノラマカメラ: 分析対象物の表面の状態を写真として記録し、保管します。

結果

DELTAは独自の基本パラメーターに基づくアルゴリズムと組成に基づく校正法を使用します。これによって、迅速かつ高精度な軽元素分析が可能となり、PMIで特に重要な元素については極めて低い検出限界を実現しています。以下に説明する3種類の例は、自動車産業のPMI用途においてハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAが示す能力の一端を示しています。
 

  1. 合金鋼4140と4340は、クランクシャフトやギア、スプライン、軸などの特に高い強度が要求される用途で頻繁に使用される材料です。 両方の合金の化学組成をDELTAで解析した結果を図1に示します。 これらの合金では、クロムとモリブデンを含む領域に重なりが見られるため、両者の識別に混乱を生ずる可能性があります。 しかし、DELTAは4340に含まれるニッケルを簡単に分析できるので、性質の類似したこれら2種類の合金を明確に識別することができます。

Test-Alloy Plus                Test Alloy Plus: 4340

図1. 2種類の合金鋼(4140、4340)の比較
 

2. ステンレス合金鋼304、303は耐熱性、耐腐食性を要求される用途やファスナーなどに使用されています。 この2種類の類似した合金は、機械加工性という点では驚くほどの違いを示します。 組成元素構成は全体としては良く似ていますが、硫黄を含有するのは303だけです。硫黄検出能力を持つDETLAを使用すれば、この2種類の合金を区別することができます。

Test-Alloy Plus 304            Test-Alloy Plus 303

図2. 2種類のステンレス鋼(304、303)の比較
 

3. 2種類のアルミニウム6061と6063は、いずれも一般的に使用されている材料ですが、用途は全く異なります。6061は構造材や強度が要求される用途向けであり、6063は装飾品や車体パネルなどに使用されます。 DELTAは、6061に含まれる銅を検出することによって、これらの合金を明確に識別します。

    Test-Alloy Plus 6061                 Test-Alloy Plus 6063            

図3. 2種類のアルミニウム(6061、6063)の比較

結論

ハンドヘルド蛍光X線分析計により、自動車産業の多くの用途で一般的に使用されている合金を迅速、かつ高精度に識別することができます。 オリンパスのDELTAは、規格に正しく適合した材料を製造や機械加工、組み立ての現場に届けなければならない検査担当者を強力にサポートし、適正な品質管理の実現に寄与します。また、多くのサプライチェーンにおいても役立ちます。

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